2017年8月20日日曜日

新約聖書原典「ユダの手紙」の翻訳(私訳)

ユダの手紙 



1.イエス・キリストの僕、ヤコブの兄弟であるユダから、父であられる神に愛され、イエス・キリストによって召され、守られている人々へ。2.憐れみと、平安と、愛が、あなたがたに増し加えられるように。
3.愛する者たちよ、わたしたちが共にあずかる救いについては、早急にあなたがたに書き送りたいと願っていて、聖徒たちにひとたび授けられた信仰のために戦うようにと、わたしはあなたがたに手紙を書いて勧めをなす必要があると感じました。4.というのは、ある者たち、すなわち、不敬神な者たちが忍びこんで来て、わたしたちの神の恵みを不道徳なものに変え、唯一の君であり、わたしたちの主イエス・キリストを否定しているからです。彼らが裁きを受けることは、昔から予告されていたのです。
5.あなたがたはみな知っていることですが、イエスは、民をエジプトの地から救い出し、その後、信じなかった者たちを滅ぼされたことを思い出してもらいたいのです。6.また、自分たちの地位を守らず、自らの住まいを捨て去ってしまった天使たちを、大いなる日の裁きのために永久の鎖で縛り、暗黒の下に閉じ込めて置かれました。7.ソドムとゴモラと周辺の町々も、この天使たちと同様であって、淫行に身をゆだね、不自然な肉欲を追い求めたので、永遠の火の刑罰を受け、見せしめにされています。
8.それにもかかわらず同様に、これらの者たちは夢を見ながら肉体を汚し、尊厳を無にし、栄光を汚しているのです。9.しかし、天使長ミカエルは、モーセの遺体のことで悪魔と議論して裁決した時、相手を敢えてののしり裁くことをしないで、「主がお前を戒めてくださるように」と言いました。10.しかし、これらの者たちは自分の知りもしないことをののしり、理性のない動物のように本能的に知っているだけであって、それらのことによって破滅を招いているのです。11.ああ、彼らはなんと悲しいことか。彼らはカインの道を行き、利益のためにバラムの欺きに浸り、コラの反逆によって滅んで行くのです。12.これらの者たちは、あなたがたの愛餐に恐れもなく同席するしみ、自分自身を養う者、風に運び去られる乾いた雲、実を結ばず根こそぎ引き抜かれて枯れてしまった秋の木々、13.自分たちの恥を泡立たせる海の荒波、さまよう星々です。彼らには真っ暗闇が永遠に残されているのです。
14.アダムから七代目にあたるエノクも、このことについて預言して言いました。「見よ、主は無数の聖なる者たちを伴って来られる。15.それは、すべての者たちに対して裁きを行うためであり、不敬神な者たちのすべての不敬神な行いと、不敬神な罪人たちが主に逆らって語ったすべての暴言について、すべて命ある者をとがめるためである」。16.これらの者たちは不平をつぶやく者であり、自分たちの欲望のままに生活し、彼らの口はごう慢な言葉を語り、自分の利益のために人を分け隔てする者たちです。
17.しかし、愛する者たちよ、あなたがたは、わたしたちの主イエス・キリストの使徒たちによってあらかじめ語られた言葉を思い出しなさい。18.すなわち、彼らはあなたがたにこう言ったのです。「終わりの時に、あざける者たちが現れて、自分の不敬神な欲望のままに生活するでしょう」と。19.これらの者たちは、分派を作る者、肉に属する者、御霊を持たない者たちです。
20.しかし、愛する者たちよ、あなたがたはその聖なる信仰によって自分たちを築き上げ、聖霊によって祈り、21.神の愛によって自分を守り、永遠の命に導いてくださるわたしたちの主イエス・キリストの憐れみを待ち望みなさい。22.判断がつかない人々を憐れみ、23.彼らを火の中から力ずくで救ってやりなさい。彼らを畏れの心をもって憐れみなさい。肉に汚れている者に対しては、下着さえも忌み嫌いなさい。

24.あなたがたを、つまずくことのない者として守り、その栄光の御前に傷のない者として大きな喜びのうちに立たせてくださることのできる方に、25.すなわち、わたしたちの救い主であられる唯一の神に、わたしたちの主イエス・キリストを通し、栄光、尊厳、力、権威が、永遠の昔から、今も、また永遠に至るまで、いつまでもありますように、アーメン。



2017年7月26日水曜日

新約聖書原典「ヤコブの手紙」5章の翻訳(私訳)

ヤコブの手紙 

5章


1.さあ、富んでいる人たちよ、聞きなさい。あなたがたにふりかかろうとする困窮を思って、泣きわめきなさい。2.あなたがたの富は朽ち果て、あなたがたの衣服は虫に食われ、3.あなたがたの金銀はさびている。それらのもののさびは、あなたがたの(不義)の証拠となって、あなたがたの肉を火のように食い尽すでしょう。あなたがたはこの終わりの時にあって、なお宝を蓄えているのです。4.見よ、あなたがたの畑を刈り取った労働者たちから、あなたがたが搾取した彼らの賃金が叫んでいます。そして、刈り入れをした人たちの叫びが、『万軍の主の耳に』入りました。5.あなたがたは地上で贅沢三昧に暮らし、快楽にふけり、『ほふられる日のために』自分の心を肥やし、6.正しい人を罪に定めて殺したのです。その人はあなたがたに抵抗しない。
7.だから兄弟たちよ、主が来られるまで耐え忍びなさい。見よ、農夫は、前の雨と後の雨があるまで、地の尊い実りを忍耐しながら待つのです。8.あなたがたも、主の来臨が近づいているので、あなたがたの心を強くし、忍耐して待っていなさい。9.兄弟たちよ、互いに不平を言ってはいけません。それは裁きを受けることのないためです。見よ、裁く方が戸口の前に立っておられます。10.兄弟たちよ、主の名によって語った預言者たちを、苦難と忍耐の模範としなさい。11.耐え忍んだ人たちは幸いだと、わたしたちは思います。あなたがたはヨブの忍耐のことを聞いたことがあるでしょう。そして、主が(彼になさった)結末を見て、主は情け深く、あわれみに満ちた方であることがわかったでしょう。
12.さて、わたしの兄弟たちよ、何よりも先ず、誓ってはなりません。天や地を指して誓っても、あるいはその他、どんな誓いもしてはなりません。あなたがたは「然り」は「然り」、「否」は「否」としなさい。それは、あなたがたが裁きにあうことのないためです。
13.あなたがたの中で、苦しんでいる人がいれば、その人は祈りなさい。元気な人がいれば、讃美の歌をうたいなさい。14.あなたがたの中で、病んでいる人がいれば、その人は教会の長老たちを招き、油をその身に塗ってもらい、主の名によって祈ってもらいなさい。15.信仰による祈りは病んでいる人を救い、主がその人を立ち上がらせてくださいます。また、その人が罪を犯していれば、赦されるでしょう。16.だから、互いにもろもろの罪を告白し合い、癒されるように、互いのために祈りなさい。ただしい人の祈りは働いて、大きな効力を持ちます。17.エリヤはわたしたちと同じような人間でしたが、雨が降らないようにと祈ったところ、三年六か月の間、地上に雨が降らなかったのです。18.また再び祈ったところ、天が雨を降らせ、地はその実をみのらせました。

19.わたしの兄弟たちよ、もし、あなたがたの中に真理から迷い出た人がいて、だれかがその人を(真理へ)連れ戻すなら、20.迷いの道から罪人を連れ戻した人は、その罪人のたましいを死から救い、多くの罪を覆うことになると知りなさい。

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●「自然の中で聴く聖書」ヤコブの手紙 5章1~11節
●「自然の中で聴く聖書」ヤコブの手紙 5章12~20節


2017年7月10日月曜日

新約聖書原典「ヤコブの手紙」4章の翻訳(私訳)

ヤコブの手紙 

4章


1.あなたがたの間の戦いはどこから来るのですか。また争いはどこから来るのですか。ほかでもなく、あなたがたの肢体の内にある、戦いをいどもうとする欲望からではありませんか。2.あなたがたは欲するが得られず、人を殺すのです。熱望するが、得ることができず、争ったり戦ったりするのです。あなたがたは求めないから、得られないのです。3.あなたがたが求めても得られないのは、自分たちの欲望のために使おうと、悪い求め方をするからです。4.不貞な者たちよ、世を友とするのは神に敵することだ、ということを知らないのですか。世の友になりたいと欲する者は、神の敵とされるのです。5.それとも、「神は、わたしたちの内に住まわせた霊を、ねたむ程に慕っておられ、さらに豊かに恵みを与えられる」と聖書が言う言葉は空しいと思うのですか。6.ですから、こう言っています。
『神は、高慢な者たちには敵となり、
謙遜な者たちには恵みを与えられる。』
7.だから、神に服従し、悪魔に抵抗しなさい。そうすれば、悪魔はあなたがたから逃げていくでしょう。8.神に近づきなさい。神もあなたがたに近づいてくださいます。罪深い者たちよ、手を清めなさい。ふた心の者たちよ、心を清めなさい。9.嘆き悲しみ、泣きなさい。あなたがたの笑いを悲しみに、喜びを憂いに変えなさい。10.主の御前に低くなりなさい。主はあなたがたを高めてくださるでしょう。
11.兄弟たち、互いに悪口を言ってはいけません。兄弟の悪口を言ったり、自分の兄弟を裁いたりする者は、律法をののしり、律法を裁くことになるのです。もし、あなたが律法を裁くなら、あなたは律法を行う者ではなく、むしろ律法を裁く者なのです。12.律法を制定され、また裁きを行う方はお一人であって、この方が救うことも滅ぼすこともお出来になるのです。隣人を裁くあなたは、いったい何者ですか。

13.「今日か明日、これこれの町へ行ってそこで一年間過ごし、商売をしてひと儲けしよう」と言う者たちは、よく聞きなさい。14.あなたがたには、自分の命がどうなるのか、明日のことは誰にもわからないのです。あなたがたは、わずかの間現れ、その後は消えて行く霧にすぎません。15.その代わりに、あなたがたは、「主の御心ならば、これからも生きて、このこともあのこともしよう」と言うべきです。16.しかし、今、あなたがたは、誇り高ぶっています。そのような誇りは、すべて悪です。17.ですから、なすべき善を知りながら行わないのは、その人にとって罪なのです。

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●「自然の中で聴く聖書」ヤコブの手紙 4章

★4節の「不貞な者たちよ」は、生ける神を裏切って偶像を拝むものたちに呼びかける、ヘブライ的表現。

2017年7月4日火曜日

新約聖書原典「ヤコブの手紙」3章の翻訳(私訳)

ヤコブの手紙 

3章


1.わたしの兄弟たちよ、多くの者たちは、教師になってはいけません。わたしたちは、より一層の厳しい裁きを受けることを知っているからです。2.わたしたちはみな、多くの過ちを犯します。もし、言葉の上で過ちがないなら、その人は、全身をも制御することのできる完全な人です。3.馬を御するために、馬の口にくつわをはめれば、その全身を引きまわすことができます。4.また、船を見なさい。あのように大きいですが、強風に吹きつけられても、小さな舵によって、舵取りは、進みたいと思う方向へと導くのです。5.このように、舌も小さな器官ですが、大言壮語します。見なさい、どんなに小さな火でも、大きな森林を燃やしてしまうのです。6.舌は火です。不義の世界です。舌は、わたしたちの体の器官の一部として備わっているものですが、全身を汚し、生存の車輪を燃えあがらせ、ゲヘナの火によって焼かれます。7.あらゆる自然の獣も、鳥も、は虫類も、海の生物も、人類によって制せられているし、また、制せられてきました。8.しかし、舌を制することのできる人は一人もいません。舌はしずめようのない悪であって、死をもたらす毒に満ちています。9.わたしたちは舌で、父でもある主を讃美し、またその舌で神に似せて造られた人々を呪っているのです。10.その同じ口から、讃美と呪いが出て来るのです。わたしの兄弟たち、このようなことは、あってはなりません。11.泉が、同じ穴から、甘い水とにがい水とを湧き出させることができるでしょうか。12.わたしの兄弟たち、いちじくの木がオリーブの実を、ぶどうの木がいちじくの実を結ぶことができるでしょうか。塩水も甘い水を生じることはできません。

13.あなたがたの中で、知恵があり、物わかりのよい人は誰ですか。その人は、自分の知恵のある柔和な行いを、良い振る舞いによって示しなさい。14.もし、あなたがたの心の中に、にがにがしいねたみや党派心があっても、自慢したり、真理に逆らってうそを言ったりしてはいけません。15.そのような知恵は、上から下って来たものではなく、地に属する知恵であり、肉に属するもの、悪魔に属するものです。16.ねたみや党派心がある所には、騒乱とあらゆる悪い出来事がおこります。17.しかし、上からの知恵は、第一にきよく、次に平和に満ち、寛容で、従順で、憐れみと良い実に満ちており、偏見がなく、偽りがありません。18.そして、平和をつくり出す人々によって、義の実が平和の内にまかれるのです。

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●「自然の中で聴く聖書」ヤコブの手紙 3章



2017年6月30日金曜日

新約聖書原典「ヤコブの手紙」2章の翻訳(私訳)

ヤコブの手紙 

2章


1.わたしの兄弟たち、わたしたちの栄光の主、イエス・キリストを信じるのに、分け隔てをしてはいけません。2.例えば、あなたがたの会堂に華やかな衣服を着、金の指輪をはめた人が入って来たとし、またそこに、よごれた衣服を着た貧しい人が入って来たとします。3.すると、あなたがたは、華やかな衣服を着ている人を見上げて、「あなたは、どうぞこちらの良い席にお座りください」と言い、貧しい人には、「あなたは立っているか、それとも、わたしの足もとのそこに座っていなさい」と言ったとしたら、4.あなたがたは、自分たちの間で差別をして、邪悪な思いで(人を)裁いたことになるのではないでしょうか。5.わたしの愛する兄弟たち、よく聞きなさい。神は、この世における貧しい人々を選んで信仰に富ませ、ご自分を愛する人々に約束された御国を受け継ぐ者となさったのではありませんか。6.しかし、あなたがたは貧しい人を辱めたのです。あなたがたに対し権力をふるい、あなたがたを裁判所にひいて行くのは、これら富める者たちではありませんか。7.あなたがたにつけられた尊い名を汚すのは、彼らではありませんか。
8.それでも、もし、ほんとうに、あなたがたが聖書にしたがって、『自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい』という最も重要な律法を守っているなら、それは良いことです。9.しかし、もし、分け隔てをしているのなら、あなたがたは罪を働いていることになり、律法によってあなたがたは違反者として非難されるのです。10.だれでも、律法の全てを守ったとしても、一つの点でも落度があれば、全体を犯したことになるのです。11.『姦淫するな』と言われた方は、また『殺すな』とも言われました。そこで、たとえ、あなたが姦淫をしなくても、人殺しをすれば、律法の違反者となるのです。
12.自由の律法によって裁かれようとしている者らしく語り、また行いなさい。13.憐れみを示さなかった者に対しては、無慈悲な裁きが下され、憐れみは裁きに勝ち誇ります。
14.わたしの兄弟たち、「自分には信仰がある」と言う人がいても、もし、行いがなければ、それは何の役に立ちますか。その信仰は、彼を救うことができるでしょうか。15.もし、兄弟か姉妹が裸でいて、その日の食物にもこと欠いていて、16.あなたがたの内の誰かが、彼らに「安らかに行きなさい、温まって腹いっぱい食べなさい」と言うだけで、体に必要なものを何一つ彼らに与えないとすれば、何の役に立ちますか。17.信仰もこれと同じです。もし、行いがなければ、それだけでは死んだものです。
18.しかし、ある人は、「あなたには信仰があり、わたしには行いがある」と言うでしょう。それでは、行いのないあなたの信仰を、わたしに示してください。そうすれば、わたしも、行いによるわたしの信仰をあなたに示してあげましょう。19.あなたは、「神は唯一である」と信じています。結構なことです。悪霊たちも、信じて震えおののいています。

20.ああ、愚かな者よ、行いのない信仰が無価値なものだということを知りたいのですか。21.わたしたちの父アブラハムは、その子イサクを祭壇の上にささげたとき、行いによって義と認められたではありませんか。22.あなたも知っているように、信仰が、彼の行いと共に働き、行いによって信仰が完成し、23.こうして、『アブラハムは神を信じた。そして、彼は義とみなされた』と言う聖書の言葉が成就され、彼は神の友と呼ばれたのです。24.人は行いによって義とされるのであって、信仰のみによるのではないことを知りなさい。25.同様に、娼婦ラハブも、使いの者たちを迎え入れ、彼らを別の道に送り出したとき、行いによって義とされたではありませんか。26.息のない肉体が死んだものであるように、行いのない信仰も死んだものなのです。

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●「自然の中で聴く聖書」ヤコブの手紙 2章1~13節
●「自然の中で聴く聖書」ヤコブの手紙 2章14~26節
https://www.youtube.com/watch?v=6hjaUWnO6Gg







2017年6月28日水曜日

新約聖書原典「ヤコブの手紙」1章の翻訳(私訳)

ヤコブの手紙 


1章


1.神と、主イエス・キリストの僕ヤコブが、離散した十二の部族の人々へ挨拶を送ります。
2.わたしの兄弟たち、いろいろな試練に出合った場合、大きな喜びと思いなさい。3.なぜなら、あなたがたも知っているように、あなたがたの信仰が試されて、忍耐が生み出されるからです。4.何一つ欠けたところのない、充分成長し全くととのった者となるために、忍耐を最大限に働かせなさい。
5.もし、あなたがたの中の誰かが、知恵に不足しているなら、とがめることなく、すべての人に惜しみなくお与えになる神に求めなさい。そうすれば、その人に与えられるでしょう。6.何も疑わずに、信仰によって求めなさい。疑う人は、風に吹かれて巻き上がる海の荒波に似ています。7.そのような人は、主から何かをいただけると期待してはいけません。8.彼は、ふた心の者であって、生き方全般において定まりのない者です。
9.身分の低い兄弟は、自分が高くされたことを誇りに思いなさい。10.富んでいる人は、自分が低くされたことを誇りに思いなさい。なぜなら、富んでいる人は、草花のごとく消え去るからです。11.太陽が炎暑とともに昇ると、草は枯れ、花は散り、その美しい姿は滅び去ってしまいます。このように、富んでいる人も、その一生の旅の途中で消え失せてしまうでしょう。
12.試練を耐え忍ぶ人は、幸いです。なぜなら、その人は本物であることが証明され、神を愛する人々に約束された命の冠をいただくようになるからです。13.誘惑に遭っているとき、だれも、「わたしは神から試みられている」と言ってはなりません。なぜなら、神は悪の誘惑をなさる方ではなく、誰をも誘惑なさらないからです。14.しかし、人はそれぞれ自分の欲望によって試みられ、引きずられ誘われます。15.更に、欲望がはらんで罪を生み、罪が熟して死を生むのです。
16.わたしの愛する兄弟たち、誤解してはいけません。17.すべての良い贈り物、すべての完全な賜物は、上から、光の父から下って来ます。父には、変化とか、回転によって生じる影はありません。18.神は、わたしたちを、いわば、被造物の初穂とするために、真理の言葉によって、御心のままにわたしたちを生んでくださったのです。
19.わたしの愛する兄弟たち、このことをわきまえていてください。人はみな、聞くに早く、語るに遅く、怒るに遅くありなさい。20.人の怒りは、神の義をもたらすものではないからです。21.ですから、すべてのけがれ、積もり積もった悪を素直に捨て去り、(心に)植えつけられた御言葉を受け入れなさい。御言葉には、あなたがたのたましいを救う力があります。
22.御言葉を行う人になりなさい。自分を欺いて聞くだけの者になってはいけません。23.もし、御言葉を聞くだけで行わない人がいれば、その人は、鏡の中の生まれつきの自分の顔を観察している人に似ています。24.自分を観察し、そこから立ち去ると、自分がどんな姿だったかすぐに忘れてしまいます。25.完全で自由の律法を、一心に見つめてそれに留まる人は、聞いて忘れてしまう人ではなく、聞いて行う人です。こういう人は、その行いによって幸福になるでしょう。

26.もし、だれかが、自分は信心深い者だと思っても、自分の舌を制することをせず、自分の心を欺くなら、その人の信心は空虚なものとなります。27.父であられる神の御前にきよく、汚れのない信心とはこのことです。すなわち、苦しみの中にある孤児たち、やもめたちの世話をし、自分自身を世から守って汚れに染まらないことです。

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●「自然の中で聴く聖書」/ ヤコブの手紙 1章1節~15節
●「自然の中で聴く聖書」/ ヤコブの手紙 1章16節~27節


2017年6月25日日曜日

新約聖書原典「ペトロの手紙二」3章の翻訳(私訳)

ペトロの手紙  

3章


1.愛する者たちよ、わたしはすでにこの第二の手紙をあなたがたに書いていて、これらの手紙によって、あなたがたの記憶の中の純粋な心を奮い立たせようとしているのです。2.それは、聖なる預言者たちによってあらかじめ語られた言葉と、あなたがたの使徒たちによって伝えられた救い主なる主の戒めを思い起こさせるためなのです。3.まず、このことを知るべきです。すなわち、終わりの時代には、あざける者たちがあざけりながら現れるでしょう。そして、自分たちの欲望の赴くままに生活し、4.「主の来臨の約束は、どうなったのか。先祖たちが眠りについてから、すべてのものは創造の始めからこのように存続している」と言います。5.それは彼らが、このことに気づこうとしないからです。すなわち、昔から天が存在し、また地は、水から、水によって、神の言葉により成り立ったのですが、6.その時の世界は、神の言葉により、洪水に覆われ滅んでしまいました。7.しかし、今の天と地は、同じ御言葉によって貯えられており、裁きの日に不信心な者たちが火によって滅ぼされるまで保たれているのです。
8.愛する者たち、このことを忘れてはいけません。すなわち、主の御前では、一日は千年のようであり、千年は一日のようだということです。9.ある人々が遅いと思っているように、主は約束の実行を遅らせておられるのではありません。ただ、誰も滅びること望まれないで、すべての人が悔い改めに至ることを望み、あなたがたに対して忍耐をしておられるのです。
10.しかし、主の日は盗人のようにやって来るでしょう。その日には、天は大騒音をたてて消え去り、自然界のあらゆるものは焼け尽きて滅び、地とその中に造られたものも消え失せてしまうでしょう。11.このように、これらのものはみな滅びて行くものですから、あなたがたは、どれほどきよく、信心深い振る舞いをしていなければならないことでしょう。12.あなたがたは神の日の来るのを待ち望み、熱心に努めているのですから。その日、天は焼けて崩れ、自然界のあらゆるものは燃え尽き溶けてしまいます。13.しかし、わたしたちは、神の約束に従って、義の住む『新しい天と、新しい地』を待ち望んでいるのです。
14.愛する者たちよ、あなたがたはこれらのことを待ち望んでいるのですから、汚点がなく、非難されるところもなく、平和のうちに神に見出していただけるように熱心に努めなさい。15.わたしたちの主の忍耐は、(わたしたちの)救いのためだと思いなさい。わたしたちの愛する兄弟パウロも、彼に与えられた知恵によってあなたがたに書いたとおりです。16.彼は、どの手紙の中でも、これらのことについて述べています。それらの手紙には、ところどころ分かりにくい箇所もあって、無知で(心の)定まらない人々は、ほかの聖書に対してもしているように、(真理を)ねじ曲げ、自分たちの滅びをその身に招いているのです。

17.愛する者たちよ、あなたがたは(これらのことを)かねてから知っているのですから、無法な者たちの誤った考えに誘い込まれて、自分の堅固さから流されないように注意していなさい。18.わたしたちの主、救い主イエス・キリストの恵みと知識において成長しなさい。このキリストに、栄光が、今も、そして永遠に至るまでもありますように。

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●「自然の中で聴く聖書」Ⅱ ペトロの手紙 3章


★「あざける者たち」(3)、「心の定まらない者たち」(16)、「不道徳な者たち」(17)は、いずれも、2章で現れる「偽教師たち」を意味することは明らか。



2017年6月23日金曜日

新約聖書原典「ペトロの手紙二」2章の翻訳(私訳)

ペトロの手紙  

2章


1.かつて、民の中に、偽預言者たちが現れましたが、また、あなたがたの中にも、同じように、偽教師たちが現れるでしょう。彼らは破滅的異端を秘かに持ち込み、彼らを買い取ってくださった主人を拒んで、自分自身に、すみやかな滅亡を招いています。2.そして、大勢の人々が彼らの放縦な生活に倣い、彼らのゆえに、真理の道が汚されるでしょう。3.彼らは貪欲と虚偽の言葉とによって、あなたがたを餌食にするでしょう。彼らに対する裁きは昔から怠りなく行われてきており、彼らの滅びも遅れることはありません。
4.神は、罪を犯した天使たちを容赦しないで、むしろ暗黒の下界の縄につなぎ、裁きのために閉じ込められました。5.また神は、昔の世界を容赦しないで、むしろ不敬神な者たちの世界に洪水をもたらし、ただ、義の布告者ノアたち八人を保護されました。6.また神は、ソドムとゴモラの町を焼いて灰にして滅ぼし、罪に定めて、不敬神に陥ろうとする者たちの見せしめとされました。7.また神は、放縦な世にあって、不道徳な者たちの振る舞いによって虐待されていた正しいロトを救出されました。8.なぜなら、この正しい人は、彼らの間に住んで見聞きしては、その不法な行いに、日々、正しい心を痛めていたからです。9.主がご存知ですが、主は神を畏れ敬う人々を試みの中から救い出されますが、不義な者たちを罰して、裁きの日まで監視されます。10.特に、汚れた欲望の中で肉に従って歩み、主の権威を軽んじる者たちを(そのようにされます)。彼らは大胆不敵で、横柄であり、栄光ある者たちを恐れず、神を汚す者たちです。11.天使たちは、権能にも力にも、はるかに優っているにもかかわらず、主の御前で彼らに反対してののしったり裁きを求めたりはしません。

12.この者たちは、捕らえられて滅びるよう、本能に支配されるために生まれついている理性のない生きもののようなもので、彼らは無知によって(神を)冒涜しているのです。これらの動物たちが滅びるように、彼らもいずれ滅ぼされて行くでしょう。13.彼らは不義を行い、不義の報酬を受けます。彼らは昼間から、ぜいたくを快楽と考えます。彼らは傷やしみのような者たちであって、自ら快楽にふけり、あなたがたを宴会に同席させ、彼らの快楽に引きこみます。14.彼らは、淫行に満ちた目を持ち、罪を犯すことをやめようとはせず、心の定まらない人々を誘惑する、心が貪欲で鍛えられた呪いの子たちなのです。15.彼らはまっすぐな道を離れて迷い、ボソルの子バラムの道に倣ったのです。バラムは不義の報酬を愛しましたが、16.自分が律法にそむいたことの譴責を受けました。ものが言えないロバが人間の声で語って、預言者の狂気な振る舞いを止めたのです。17.これらの者たちは、水のない泉、突風によって吹き払われる霧であって、彼らには暗い闇が残されています。18.なぜなら、彼らはごう慢で無駄口をたたき、迷いの中で生活してそこから逃れてくる人々を、肉欲とみだらな生活によって誘惑するからです。19.彼らは人々に自由を約束しますが、彼ら自身が破滅の奴隷なのです。人は征服されることで、その者の奴隷となります。20.主であり、救い主であるイエス・キリストを知って、この世の汚れから逃れても、また再びそれらのことに巻き込まれ征服されるなら、彼らの後の状態は初めの状態よりさらに悪くなります。21.義の道を知りながら、自分たちに与えられた聖なる戒めを離れるよりは、むしろ、義の道を知らなかった方が、彼らにとってはよかったのです。22.「犬は自分の吐き出したもののところに戻って来る」、また、「豚は洗っても、汚物の中に転がって行く」という真実のことわざが、彼らの身にふりかかっているのです。


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●「自然の中で聴く聖書」Ⅱ ペトロの手紙 2章




2017年6月21日水曜日

新約聖書原典「ペトロの手紙二」1章の翻訳(私訳)

ペトロの手紙 二 


1章


1.イエス・キリストの僕、また使徒であるシメオン・ペトロから、わたしたちの神と救い主イエス・キリストの義によって、わたしたちと同じ尊い信仰を獲得した人々へ、
2.恵みと平安が、神とわたしたちの主イエスを知ることによって、増し加えられますように。
3.命と敬神に関わることは、すべて主イエスの神的な力によって、わたしたちに与えられていて、それはご自分の栄光と卓越した力によって、わたしたちを召してくださった方を知ることにより与えられます。4.その栄光と卓越した力によって、わたしたちに尊くすばらしい約束が与えられています。それは、あなたがたがこれらによって、情欲で腐敗したこの世における本性から逃れ、神的な性質にあずかるようになるためです。5.ですから、あなたがたは力の限りを尽くして、あなたがたの信仰に徳を、徳に知識を、6.知識に節制を、節制に忍耐を、忍耐に敬神を、7.敬神に兄弟愛を、兄弟愛に愛を加えみたしなさい。8.これらのものがあなたがたに備わり、増し加わるとき、あなたがたは怠惰で実を結ばない者とはならず、わたしたちの主イエス・キリストを知るようになるのです。9.これらを持ち合わせていない者は目の見えない者、近視の者、以前の自分の罪が清められたことを忘れている者です。10.ですから、兄弟たちよ、あなたがたの召しと選びとを確かなものとし、さらに熱心に行うよう努めなさい。これらのことを行う人々は、決して過ちを犯すことがありません。11.というのは、こうして、わたしたちの主であり、救い主であられるイエス・キリストの永遠の御国に入る道があなたがたに豊かに与えられるからです。
12.ですから、わたしは、あなたがたが、すでに知り、今、持っている真理に固く立ってはいるけれど、これらのことについて、あなたがたに思い起こさせようとしているのです。13.わたしがこの幕屋にいる限りは、あなたがたを思い起こさせて奮い立たせることが正しいことであると考えます。14.わたしたちの主イエス・キリストもわたしに示してくださったように、わたしのこの幕屋を脱ぎ去るときが近いことをわたしは知っています。15.わたしが(世を)去った後も、あなたがたがこれらのことをいつも思い起こせるよう、わたしはこれからも努めましょう。

16.わたしたちの主イエス・キリストの力と来臨とをあなたがたに知らせたとき、わたしたちは巧みな作り話に倣うことはしませんでした。わたしたちは、かの荘厳な出来事の目撃者だからです。17.イエスが、父である神から誉れと栄光をお受けになられたとき、荘厳な栄光の中から、「これはわたしの愛する我が子、わたしの喜ぶ者」と、このような声が彼にもたらされました。18.わたしたちもイエスと共に聖なる山にいて、天からもたらされたこの同じ声を聞いたのです。19.また、わたしたちは、いっそう確実な預言の言葉を持っています。夜が明け、明けの明星があなたがたの心の中に昇るまでは、この預言の言葉を暗い場所を照らす灯として、それにしっかり目をとめていなさい。20.はじめに、このことを知っておくべきです。すなわち、聖書の預言は、すべて(預言者)自身の解釈により成ったものではないということです。21.なぜなら、預言は、決して人間の意志から出たものではなく、人々が聖霊によって導かれ、神からのことばを語ったものだからです。


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●「自然の中で聴く聖書」Ⅱペトロの手紙 1章


★『聖書の預言は、すべて(預言者)自身の解釈により成ったものではないということです。』20節

この読み方は、ギリシア語原典の釈義にかなっている。今日の多くの訳では、預言の解釈においては、それを読み解くのに、読者の自由な解釈をそこに持ち込んではならない、といういわば二次的な意味での「何人もー解釈してはならない」に重点が置かれたものとなっている。しかし、本来の意味は、それを書いた預言者が、神から受けた預言を、預言者自身の解釈を加えて書いたものではないという大前提を語っているのである。今日の二次的な読み方は、キリスト教歴史の中で、中世の教会において、「聖書の解釈は教会が下した解釈に従うべき」という考えを継承してきた教会の影響がいまだ残っているのかもしれない。