2014年5月30日金曜日

新約聖書原典「ヨハネの黙示録」20章の翻訳(私訳)


ヨハネの黙示録 

20章


1.わたしはまた、一人の天使が、その手に底知れぬ所の鍵と大きな鎖を持って、天から降りて来るのを見た。2.彼は、古くからの蛇、すなわちそれは、悪魔でもサタンでもある竜を捕らえ、それを千年の間、鎖で縛り、3.底知れぬ所へ投げ落とし、その上に鍵をかけて封印した。それは、竜が千年の終わるまで、諸国民をなおも惑わすことのないようにするためである。その後、少しの期間だけ解放されることになっている。
4.わたしはまた、数々の座と、それらの上に座している人々を見た。彼らには裁きの権威が与えられた。また、イエスの証しと、神の言葉とのゆえに首を切られた人々のいのちをも見た。彼らの誰も、獣もその像をも拝まず、彼らの額と手に刻印を受けなかった。彼らは生き返って、キリストと共に千年の間、支配した。5.それ以外の死んだ者たちは、千年が終わるまで生き返らなかった。
これが第一の復活である。6.第一の復活にあずかる者は、幸いな者また聖なる者である。これらの者たちにとって、第二の死は何の力も持たない。むしろ彼らは、神とキリストの祭司となって、キリストと共に千年の間、支配することになる。
7.そして、千年が終わると、サタンはその獄から解放され、8.地の四方にいる諸国民、ゴグとマゴグを惑わすために(獄から)出て来て、彼らを戦いのために召集する。その数は、海の砂のように多い。9.彼らは、地の広い所に上って来て、聖徒たちの宿営と愛された都とを包囲した。『すると、天から火が降って、彼らを焼きつくした。』10.彼らを惑わした悪魔は、火と硫黄との池に投げ込まれた。そこには、獣も偽預言者もいて、彼らは昼も夜もいつまでも限りなく苦しめられるだろう。

11.わたしはまた、輝く大きな御座と、その上に座しておられる方を見た。地も天もその方の前から逃げ去り、跡形もなくなってしまった。12.わたしはまた、死んだ者たちが、大きな者たちも小さな者たちも、御座の前に立っているのを見た。そして、いくつかの書物が開かれた。また、ほかの一つの書物も開かれた。それは命の書である。死んだ者たちは、これらの書に書かれていることによって、彼らの行いに従って裁かれた。13.海は、その中にいる死人たちを渡し、死もハデスも、その中にいる死人たちを渡した。彼らは、それぞれその行いに従って裁かれた。14.そして、死もハデスも火の池に投げ込まれた。これが第二の死である。15.命の書に名が記されていない者はだれでも、火の池に投げ込まれた。



●「自然の中で聴く聖書」ヨハネの黙示録 20章


ὁ ὄφις ὁ ἀρχαῖος (2)「昔のへび」「古いへび」

「年を経たへび」(新共同訳、口語訳)、「古いへび」(新改訳)と訳されているが、ヨハネはエバを罪へ誘惑したへびのことを考えているとすれば、「昔のへび」と訳すのが妥当であろう。

τὰς ψυχὰς τῶν πεπελεκισμένων διὰ τὴν μαρτυρίαν Ἰησοῦ καὶ διὰ τὸν λόγον τοῦ θεοῦ (4)
「イエスの証しと、神の言葉とのゆえに首を切られた人々のいのちを…見た」

ヨハネが見た「人々のたましい τὰς ψυχὰς τῶν (タース プシューカス トーン)」は、実体のない霊魂ではなく、生きた個体である。τὰς ψυχὰς τῶν は「命を持った人々」と訳すのがより正確。ゆえに、「首を切られた人々が生きているのを見た」と訳すのが良いように思われる。それは、すぐあとに続く、「彼らは生き返って、キリストとともに千年の間支配した」より明らかなことである。

★「いくつかの書物」と「一つの書物」(12)
原語のギリシア語では複数(諸書物)と単数で使い分けされている。




2014年5月26日月曜日

新約聖書原典「ヨハネの黙示録」19章の翻訳(私訳)


ヨハネの黙示録 

19章


1.その後、わたしは天に於いて、大勢の群衆の大きな声のようなものが、こう言うのを聞いた。
「ハレルヤ、わたしたちの神の救いと栄光と力とは。
2.その裁きは真実で正しい。
神は姦淫で地を堕落させた大淫婦を裁かれ、
ご自分の僕たちの血の報復を彼女に対して行われたからである。」
3.二度目に彼らは言った。
「ハレルヤ、彼女の煙はいつまでも限りなく立ちのぼる。」
4.また、二十四人の長老たちと四つの生き物たちはひれ伏し、御座に座しておられる神を礼拝して言った。
「アーメン、ハレルヤ。」
5.また御座から声が出て言った。
「わたしたちの神をほめたたえよ。
神のすべての僕たちよ、神を畏れる者たちよ、
小さな者たち、大きな者たちよ。」
6.わたしはまた、大勢の群衆の声のような、また、大水の音のような、激しい雷鳴のような声が、こう言うのを聞いた。
「ハレルヤ、全能者で、わたしたちの神であられる主は王となられた。
7.喜ぼう、大いに喜ぼう、神に栄光を帰そう。
小羊の婚姻の時が来て、小羊の花嫁は用意を整えたからである。
8.花嫁には、身につけるための輝かしい清い亜麻布の衣が与えられた。
この亜麻布の衣とは、聖なる者たちの義しい行いである。」
9.その声はまた、わたしに言った。「書き記せ。小羊の婚姻の晩餐に招かれている者たちは幸いだ」。またわたしに言った。「これらは、神の真実の言葉である」。10.わたしがその方を拝もうとして、その足元にひれ伏すと、その方がわたしに言った。「いけない。わたしは、あなたの兄弟たち、すなわちイエスの証しを持つ人々と同じ僕仲間である。神を拝しなさい。イエスの証しとは、預言の霊である」。
11.わたしはまた、開かれている天を見た。すると見よ、白い馬と、それに乗っている方があった。その方は忠実、また真実と[呼ばれ]、義をもって裁き、また戦われる。12.その方の目は火の炎のようで、その頭には多くの冠をかぶり、そこには、その方のほかには誰にもわからない名が書かれていた。13.また、血に浸された衣を着ておられ、その方の名は、神のことばと呼ばれている。
14.そして、天では、白く清い亜麻布を着た軍勢が、白い馬に乗ってその方に従っていた。15.その方の口からは、鋭い剣が出ていた。その剣によって諸国の民を撃つためである。『彼は鉄の杖をもって彼らを治めるであろう。』また、その方は、全能の神の激しい怒りのぶどう酒の酒ぶねを踏まれる。16.その方の衣の上にも、ももの上にも、「王たちの王、主たちの主」と、名が書かれていた。
17.わたしはまた、一人の天使が太陽の中に立っているのを見た。この天使は、中空を飛んでいるすべての鳥たちに、大声で叫んで、こう言った。「さあ、神の大宴会に集まれ。18.王たちの肉、千人隊長たちの肉、力ある者たちの肉、馬たちと、それに乗る者たちの肉、すべての自由人たちと奴隷たちの肉、小さな者たちと、大きな者たちの肉を食らうために」。

19.わたしはまた、獣と地の王たちとそれらの軍勢が、馬に乗っておられる方と、その方の軍勢に対して戦いをするために召集されるのを見た。20.しかし、獣は捕らえられ、また、獣の前でしるしを行った偽預言者も共に捕らえられた。彼らは、しるしを行うことによって、獣の刻印を受けた者たちと、その像を拝む者たちとを惑わしたのである。両者は、生きたまま硫黄の燃える火の池に投げ込まれた。21.あとの者たちは、馬に乗った方の口から出ている剣によって殺され、すべての鳥たちが、彼らの肉を飽きるほど食べた。



●「自然の中で聴く聖書」ヨハネの黙示録 19章


ἀληθιναὶ καὶ δίκαιαι αἱ κρίσεις αὐτοῦ (2)
「彼の裁きは真実で正しい」

αἱ κρίσεις αὐτοῦ 「彼の裁き」の裁きは、複数形が使われている。これは神の裁きが「大淫婦」(2)をはじめ、「偽預言者」(20)、「獣の刻印を受け、獣の像を拝む」あらゆる人々(20)に及ぶことを示していると思われる。

ἡ γὰρ μαρτυρία Ἰησοῦ ἐστιν τὸ πνεῦμα τῆς προφητείας(10)
「イエスの証しとは、預言の霊です」

「イエスの証し」という言葉は黙示録1章2節で現れた「イエス・キリストの証し」と同じ使い方がされている(属格使用)。イエスに属する証し、イエスが語られ示された証し。
「預言の霊」は、「預言」も「霊」も単数。「霊」は神の霊、聖霊などをあらわすと同じτὸ πνεῦμα が使われている。




2014年5月20日火曜日

新約聖書原典「ヨハネの黙示録」18章の翻訳(私訳)


ヨハネの黙示録 

18章


1.その後、わたしは、ほかの天使が、大いなる権威を持って天から降りて来るのを見た。地はその栄光で照らされた。2.彼は力強い声で叫んで言った。
「倒れた、大いなるバビロンは倒れた。
それは悪霊どもの住み家、
あらゆる汚れた霊の巣窟、あらゆる汚れた鳥と、
[あらゆる汚れた獣]と、憎まれるものの巣窟となった。
3.すべての国々の民は、彼女の淫行の怒りの葡萄酒を飲み、地の王たちは彼女と姦淫を行い、
地の商人たちは彼女の贅沢な力によって豊かになったからである。」
4.わたしはまた、天からほかの声がこう言うのを聞いた。
「わたしの民よ、彼女の所から出て来なさい。
彼女のもろもろの罪にあずからないようにし、
彼女の傷を受けないようにしなさい。
5.彼女のもろもろの罪が天にまで達し、
神が彼女の悪事を心に留められたからである。
6.あなたがたは、彼女が行ったように、彼女に返せ。
彼女の行いに応じて、その二倍にして返せ。
彼女が混ぜたその杯に、彼女のために二倍を混ぜよ。
7.自ら高ぶって贅沢に暮らしたのと同じほどに、
彼女に苦痛と悲しみを与えてやれ。
それは彼女が、『わたしは女王の座についていて、やもめではない。わたしは決して悲しみを知らない』と心の中で言ったからである。
8.それゆえ、一日にして、災害と、死と、悲しみと、飢えが彼女に臨み、
火で焼かれてしまうだろう。
彼女を裁く神は、力ある主だからである。」
9.彼女が焼かれる煙を見る時、彼女と姦淫をし、贅沢に暮らした地の王たちは、彼女のことで嘆き悲しむだろう。10.彼らは、彼女の責め苦を恐れ、遠くに立ってこう言う。
「災いだ、災いだ、大いなる都、
力ある都、バビロン。
おまえの裁きが、一瞬にして訪れたからである。」
11.また、地の商人たちは、彼女のことで泣き悲しむだろう。もはや誰も、彼らの積荷を買うことがないからである。12.その積荷とは、金、銀、宝石、真珠、亜麻布、紫の布、絹、赤い布、あらゆる香ばしい木材、あらゆる象牙製品、あらゆる高価な木製品、銅、鉄、大理石などの器、13.また、シナモン、香料、香、香油、乳香、ぶどう酒、オリーブ油、小麦粉、麦、家畜、羊、馬、馬車、奴隷、人間などである。
14.「おまえの心からの望みである熟した果実は、
おまえから去ってしまい、贅沢な物と、きらびやかな物も皆、おまえから消え失せてしまった。
もう決して、それらは得られない。」
15.彼女からこれらの富を得ていた商人たちは、遠く離れて立ち、彼女の責め苦を恐れ、泣き悲しんで、16.こう言った。
「災いだ、災いだ、大いなる都、
高価な亜麻布と、紫と赤い衣を身にまとい、
金、宝石、真珠とで着飾った都は。
17.あれほどの富が、一瞬にしてはぎ取られてしまったのだから。」
また、すべての船のかじ取り、すべての乗客、船乗りたち、海で働く者たちはみな、遠くに立ち、18.彼女が焼かれる煙を見て、叫んでこう言った。「このような大いなる都が、どこにあろうか」。19.彼らは、自分たちの頭に塵をかぶり、泣き叫び、悲しみながら言った。
「災いだ、災いだ、大いなる都、
海に船を所有する者たちは皆、この都で、彼女の富によって豊かになったのに、
一瞬にして、荒れ果ててしまうとは。
20.天よ、彼女のために喜べ。
聖徒たち、使徒たち、預言者たちも喜べ。
神はあなたがたのために、この都を裁かれたからである。」
21.また一人の力強い天使が、引き臼のような大きな石を持ち上げ、海に投げ入れてこう言った。
「大いなる都バビロンは、このように激しく投げ込まれ、もう決して見られることはない。
22.竪琴を弾く者たちの音、歌を歌う者たちの声、
笛を吹く者たち、ラッパを吹く者たちの音は、
もう決しておまえの内には聞かれない。
あらゆる技術をもった職人たちも、
おまえの内にはもう決して見られず、
引き臼の音も、
おまえの内にはもう決して聞かれない。
23.明りの火も、
おまえの内にはもう決して見られず、
花婿の声も、花嫁の声も、
おまえの内にはもう決して聞かれない。
おまえの商人たちは地の大いなる者たちであって、
すべての国々の民は、おまえの魔術にだまされていたからである。
24.また、預言者たちと聖なる者たちの血、
および、地上で殺されたすべての者たちの血が、
この都の内に見られたからである。」



●「自然の中で聴く聖書」ヨハネの黙示録 18章


★この淫婦である女(バビロン)に神の裁きが下るが、その裁きに、神の民が仕返し(ἀπόδοτε 6節)というかたちで参加する。それも二倍返し(τὰ διπλᾶ 6節)というのも、この裁きがいかに徹底したもので恐ろしい裁きであるかを物語る。




2014年5月14日水曜日

新約聖書原典「ヨハネの黙示録」17章の翻訳(私訳)


ヨハネの黙示録 

17章


1.また、七つの鉢を持つ七人の天使たちの中の一人が来て、わたしにこう言った。「ここへ来なさい。多くの水の上に座る大淫婦の裁きをあなたに見せてあげよう。2.地の王たちは彼女と姦淫をおこない、地に住む人々も、彼女の姦淫の葡萄酒のために酔わされた」。3.また、その天使は、御霊によってわたしを荒野へ連れて行った。
そしてわたしは、赤い獣に座っている女を見た。その獣は神を汚す名で満ちていて、七つの頭と十の角を持っていた。4.女は紫と赤の衣を着ていて、金と宝石と真珠とで飾っていた。そして、嫌悪すべきものや、彼女の姦淫によって汚れたものなどでいっぱいになった金の杯をその手に持っていた。5.また彼女の額には、謎めいた名が書かれていて、それは、「大いなるバビロン、淫婦たちと地の嫌悪すべきものどもの母」というものであった。6.またわたしは、女が、聖なる者たちの血とイエスの証人たちの血に酔いしれているのを見た。わたしは彼女を見て非常に驚き怪しんだ。
7.すると、天使がわたしに言った。「なぜ驚くのか。わたしはあなたに、この女と、女を乗せている七つの頭と十の角を持つ獣の秘密を言おう。8.あなたが見た獣は、かつてはいたが今はおらず、やがて底知れぬ所から上ってこようとしているが、遂には滅び去る。地の上に住んでいる人々、すなわち、世の初めから命の書に名が書かれていなかった人々は、その獣を見て驚き怪しむだろう。その獣が、かつてはいたが今はおらず、やがて現れようとしているからである。9.ここで、知恵のある心が必要である。七つの頭とは、女が座っている七つの山々で、七人の王たちのことである。10.五人は倒れ、一人は今おり、他の一人はまだ現れていない。それが現れたなら、少しの間だけ、とどまることになっている。11.かつてはいたが、今はいない獣とは、第八の者のことで、七人の中から出るが、やがて滅び去る。12.あなたが見た十の角とは、十人の王たちである。彼らはまだ誰も国を受けていないが、一時だけ、獣と共に王のように権威を授かる。13.これらの者たちは、考えを一つにして、彼らの力と権威をこの獣に与える。14.これらの者たちは、小羊と戦うだろうが、小羊は彼らに打ち勝つ。なぜなら、彼は主たちの主、王たちの王だからである。また、小羊と共にある者たち、召された者たち、選ばれた者たち、忠実な者たちも勝利する」。

15.天使はまたわたしに言った。「あなたが見た淫婦が座っている所の水は、民族、民衆、国民、言葉の異なる民である。16.また、あなたが見た十の角と獣はこの淫婦を憎み、彼女の身に着けているものをはぎ取り、裸にしてその肉を食らい、彼女を火で焼き尽くすだろう。17.それは、神が彼らの心にご自分の御心を行わせ、思いを一つにさせ、神の言葉が完成されるまで、彼らの支配権を獣に与えるようにされたからである。18.あなたが見た女は、地の王たちの上に支配権を持つ、大いなる都のことである」。



●「自然の中で聴く聖書」ヨハネの黙示録 17章

τὰ δέκα κέρατα ἃ εἶδες καὶ τὸ θηρίον οὗτοι μισήσουσιν τὴν πόρνην (16)
「あなたが見た十の角と獣はこの淫婦を憎み」

16節冒頭の主語は、ネストレ27、28版では、『十の角と獣』となっているが、KJVの底本では、「あなたが見た獣の上の十の角は」とあり、『十の角』が主語となっている。この違いは、写本による底本の違いからであるが、どちらが正しいかは不明。ただ、両者では、預言の解釈上大きな違いが生じることは避けられない。 




2014年5月13日火曜日

新約聖書原典「ヨハネの黙示録」16章の翻訳(私訳)


ヨハネの黙示録 

16章


1.また、わたしは聖所から、七人の天使たちに語りかける大きな声を聞いた。「行って、神の怒りの七つの鉢を地に注ぎなさい」。
2.最初の天使が行って、その鉢を地に注いだ。すると、獣の刻印を受けた人々と、その像を礼拝する人々の上に、有害で悪性のできものができた。
3.また、第二の天使が、その鉢を海に注いだ。すると、海は死人の血のようになった。そして、海の中のすべての生き物が死んでしまった。
4.第三の天使が、その鉢を川と水源に注いだ。すると、それが血になった。5.またわたしは、水を支配する天使が、こう言うのを聞いた。
「今おられ、かつてもおられた方。あなたこそ正しく、聖なる方です。あなたがこれらのことを裁いてくださったからです。
6.彼らが聖徒たちと預言者たちの血を流したので、彼らに血を飲ませられたのは、ふさわしいことです。」
7.またわたしは、祭壇がこう言うのを聞いた。
「そうです、全能者であられる神、主よ、
あなたの裁きは真実で正しい。」
8.第四の天使が、その鉢を太陽の上に注いだ。すると太陽に、人々を火で焼くことが許された。9.人々は激しい熱で焼かれ、これらの災害をつかさどる権威を持つ神の名を汚し、悔い改めて神に栄光を帰すことをしなかった。
10.第五の天使が、その鉢を獣の座の上に注いだ。すると、獣の国は暗くなり、人々は苦しみ悶えながら自分たちの舌をかんだ。11.そして彼らは、自分たちの苦しみとできもののゆえに天の神を冒涜し、自分たちの行いを離れて悔い改めることをしなかった。
12.第六の天使が、その鉢を大河ユーフラテスの上に注いだ。すると川の水が干上がってしまった。それは、日が上る方から(来る)王たちに道を備えるためであった。13.またわたしは、竜の口から、獣の口から、偽預言者の口から、カエルのような三つの汚れた霊が出てくるのを見た。14.これらは、不思議を行う悪霊どもの霊であって、全能者であられる神の大いなる日の戦いに備えて、全世界の王たちを集めるために彼らのところへ出て行った。15.「見よ、わたしは盗人のように来る。裸で歩いて自分の恥を見られないために、目を覚まし、衣を身につけている人は幸いである」。16.汚れた霊どもは、ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる所に王たちを集めた。

17.第七の天使が、その鉢を空中に注いだ。すると、大きな声が聖所から御座から出て、「事は成就した」と言った。18.すると、数々の稲妻と音と雷鳴が発生し、大きな地震が起きた。それは、人間が地上に現れて以来、かつてなかったほどの大地震であった。19.大きな都が三つに裂かれ、諸国の町々は倒れてしまった。また、大いなるバビロンは神の御前に記憶されて、これに神の激しい怒りのぶどう酒の杯が与えられた。20.また、島はすべて消え去り、山も見えなくなってしまった。21.また、一タラントンほどの大きな雹が、天から人々の上に降って来た。人々は雹で害されたので、神をののしった。その害が非常に大きかったからである。



●「自然の中で聴く聖書」ヨハネの黙示録 16章


★16章の七人の天使による七つの災害は、獣の刻印を受けた者たちと、獣の像を礼拝する者たちに向けられている(2)。またこの災害が、神の聖徒たちと預言者たちの血を流したことへの報復(裁き)であることが語られている(3~5)。

ἐκ τοῦ στόματος τοῦ δράκοντος καὶ ἐκ τοῦ στόματος τοῦ θηρίου καὶ ἐκ τοῦ στόματος τοῦ ψευδοπροφήτου (13)
「竜の口から、獣の口から、偽預言者の口から」

竜、獣、偽預言者はいずれも単数となっている。これに続く「蛙のような三つの汚れた霊」は複数。ゆえに、竜、獣、偽預言者のそれぞれの口から出た汚れた霊は、それぞれ異なる三種類の霊であることがわかる。




2014年5月5日月曜日

新約聖書原典「ヨハネの黙示録」15章の翻訳(私訳)


ヨハネの黙示録 

15章


1.わたしはまた、天に、ほかの大きな驚くべきしるし、すなわち、最後の七つの災害を携えた七人の天使たちを見た。それらの災害によって、神の怒りは終わるのである。2.わたしはまた、火が混ぜられたガラスの海のようなものを見た。また、獣とその像と、その名の数字とに勝利した者たちを見た。彼らは神の竪琴を持ってそのガラスの海の上に立っていた。3.彼らは、神の僕モーセの歌と小羊の歌とを歌って言った。
「全能なる神、主よ、
あなたの御業は偉大で驚くべきものであります。
諸国民の王よ、
あなたの道は正しく真実です。
4.主よ、誰かあなたを畏れず、
あなたの御名をほめたたえない者がいるでしょうか。
あなただけが聖であられるからです。
諸国の民はみな来て、
あなたの前で礼拝するでしょう。
あなたの正しい裁きが明らかにされたからです。」

5.また、その後、わたしは、天における証しの幕屋の聖所が開かれたのを見た。6.すると、七つの災害を携えた七人の天使が、清く輝く亜麻布の衣を着て、胸に金の帯を締めて聖所から出て来た。7.そして、四つの生き物の一つが、永遠に限りなく生きておられる神の怒りが盛られている七つの金の鉢を、この七人の天使たちに渡した。8.すると聖所は、神の栄光とその力から出た煙で満たされ、七人の天使たちの七つの災害が終わるまでは、誰も聖所に入ることができなかった。




●「自然の中で聴く聖書」ヨハネの黙示録 15章


★3節と4節で「裁き」と訳した元のギリシア語は「わざ」または「行い」であるが、文脈から「裁き」であることは明らか。

ἠνοίγη ὁ ναὸς τῆς σκηνῆς τοῦ μαρτυρίου (5)
「証しの幕屋の聖所」。 これは古代イスラエルの民の聖所の中の契約の箱が置かれていた至聖所を意味し、ヨハネの幻の中では「天の至聖所」を指すものと思われる。


★「すると聖所は、神の栄光とその力から出た煙で満たされ、七人の天使たちの七つの災害が終わるまでは、誰も聖所に入ることはできなかった」(8)

七つの災害が終わるまで、天の聖所には誰も(キリストでさえ)入ることはできず、仲保、とりなしの業は終わったことを示すもの。その後に七つの災害が続く。




2014年5月1日木曜日

新約聖書原典「ヨハネの黙示録」14章の翻訳(私訳)


ヨハネの黙示録 

14章


1.また、わたしは見た。見よ、小羊がシオンの山に立っていた。また、十四万四千の人々も小羊と共にいて、彼らの額には小羊の名と小羊の父の名が書かれていた。2.そして、大水のとどろきのような、大きな雷鳴のような声が天から聞こえた。わたしが聞いたその声は、竪琴を弾く者たちが自分の竪琴を弾きながら歌う声のようであった。3.彼らは御座の前と、四つの生き物と長老たちの前で新しい歌を歌った。これは、地から贖われた十四万四千の人々以外には誰も学ぶことができない歌であった。
4.これらの人々は、女で汚されなかった人々、身を清く保った人々である。これらの人々は、小羊が行く所ならどこへでもついて行く。これらは神と小羊とにささげられる初穂、人々の中から贖われた者たちで、5.彼らの口には偽りがなく、傷がない。
6.わたしはまた、ほかの天使が、中空を飛んでいるのを見た。彼は、地上に住む人々とすべての国民、部族、言葉の違う民、民衆に知らせようと、永遠の福音を携えて、7.大声で言った。
「神を畏れ、神に栄光を帰せよ。
神の裁きの時が来たからである。
天と地と海と水の源を造られた方を礼拝せよ。」
8.また、ほかの第二の天使が続いて来て言った。
「倒れた、大いなるバビロンは倒れた。彼女の偶像礼拝による激しい怒りのぶどう酒を、あらゆる国の民に飲ませた者。」
9.また、ほかの第三の天使が彼らに続いて来て、大声で言った。
「もし、獣とその像を礼拝し、その額や手に刻印を受ける者がいれば、10.この者は、神の御怒りの杯に、混ぜものなしに注がれた神の激しい怒りのぶどう酒を飲み、また、聖なる天使たちの前と小羊との前で、火と硫黄とで苦しめられるであろう。11.彼らの苦しみの煙はいつまでも限りなく立ち昇り、獣とその像を礼拝する者たち、また、その名の刻印を受ける者がいれば、彼らは昼も夜も休息が得られない。12.ここに、神の戒めと、イエスの信仰を守る聖なる者たちの忍耐がある。」
13.わたしはまた、天からこう語る声を聞いた。
「書き記せ、今から主にあって死ぬ死者たちは幸いだ」。御霊が言う、「然り、彼らはその労苦から解かれ休息を得るであろう。彼らの行いが、彼らと共についてくるからである。」
14.また、わたしは見た。見よ、輝く雲が。その雲の上には、人の子のような方が座しておられ、その頭上には金の冠を戴き、その手に鋭い鎌を持っていた。15.また、ほかの天使が聖所から出て来て、雲の上に座しておられる方に大声で叫んだ。
「あなたの鎌を入れて刈り取りなさい。
刈り入れの時が来て、地の作物が熟したから。」
16.そこで、雲の上に座っておられる方が、鎌を地上に投げ入れると、地は刈り取られた。

17.また、ほかの天使が天にある聖所から出て来た。その天使も鋭い鎌を持っていた。18.また、火をつかさどる権威を持つほかの天使が祭壇から[出てきて]、鋭い鎌を持つこの天使に大声で叫んで言った。「あなたの鋭い鎌を入れて、地のぶどうの房を収穫しなさい。ぶどうの実が熟したから」。19.そこで、天使は自分の鎌を地に投げ入れ、地のぶどうを刈り集め、神の怒りの大きな酒ぶねに投げ入れた。20.その酒ぶねは都の外で踏まれ、血が酒ぶねから流れ出て、馬のくつわに達するまでになり、(その範囲は)千六百スタディオン《296キロメートル》に及んだ。



●「自然の中で聴く聖書」ヨハネの黙示録 14章
https://youtu.be/P9ZgzTCPN0M


★6~12節は三天使のメッセージと言われるもの。このメッセージが重要視されるのは、この三人の天使が、ἔχοντα εὐαγγέλιον αἰώνιον εὐαγγελίσαι ἐπὶ τοὺς καθημένους ἐπὶ τῆς γῆς 「地上に住んでいる人々に永遠の福音を携えて」(6)いるからである。そして三天使はいずれも πετόμενον ἐν μεσουρανήματι 、「空中を飛ぶ」(6)という表現とともに、λέγων ἐν φωνῇ μεγάλῃ大声で言った」(7)、ἠκολούθησεν λέγων 第二の天使が「続いて言った」、ἠκολούθησεν αὐτοῖς λέγων ἐν φωνῇ μεγάλῃ  第三の天使が「彼らに続いて大声で言った」(9)など、次々と連続して緊急なメッセージを地上に住む人々に伝えようとしている表現からもわかる。

★14:12の「イエスの信仰」について
「ここに、神の戒めと、イエスの信仰を守る聖なる者たちの忍耐がある。」