2015年4月6日月曜日

新約聖書原典「使徒たちの働き」19章の翻訳(私訳)


使徒たちの働き 

19章


1.さて、アポロがコリントにいた時、パウロは奥地を通ってエフェソに[下って]来た。そこである弟子たちに会い、2.彼らに、「あなたがたが信仰を持ったとき、聖霊を受けましたか」と言った。彼らはパウロに対して言った。「わたしたちは聖霊が存在するかどうかも聞いたことがありません」。3.パウロが言った。「ではどんなバプテスマを受けたのですか」。彼らは言った。「ヨハネのバプテスマです」。4.パウロが言った。「ヨハネは、『自分の後に来られる方、すなわち、イエスを信じるように』と言って、民衆に悔い改めのバプテスマを授けたのです」。5.そこで彼らはこれを聞いて、主イエスの名によってバプテスマを受けた。6.パウロが彼らに手を置くと、聖霊が彼らの上に臨み、彼らは異言を語ったり預言をしたりし始めた。7.その人たちは皆で十二人ほどであった。
8.さて、パウロは三か月の間、会堂に入っては大胆に語り、神の国[のこと]について論じまた説得していた。9.しかし、ある者たちは頑固で従おうとはせず、大勢の面前でこの道をののしったので、パウロは彼らから遠ざかり、弟子たちを避けてティラノの講堂で毎日論じていた。10.このことが二年にも及んだので、アジアに住む人々、ユダヤ人もギリシア人も、全ての人々が主の言葉を聞くこととなった。
11.神はパウロの手によって並々ならぬ力ある業を行われ、12.彼が身に着けていたハンカチやエプロンを持って行って病気の人たちの上に掛けると、彼らから病気が去り、悪霊どもも出て行った。
13.そこで、各地を巡り歩いているあるユダヤ人祈祷師たちが、悪霊に取りつかれた者たちに主イエスの名を唱え、「パウロが伝えているイエスによってお前たちに命じる」と言って試してみた。14.ユダヤ人の祭司長でスケワという者に七人の息子たちがいたが、彼らがこんなことをしていたのである。15.ところが、悪霊がこたえて彼らに言った。「イエスなら我々は知っている。パウロのことも分かっている。だが、お前たちはいったい何者か」。16.そして、悪霊に取りつかれていた人が彼らに飛びかかり、全員を抑えつけ打ち負かしたので、彼らは裸にされ、傷を負ってそこの家から逃げ出した。17.このことがエフェソに住む全てのユダヤ人とギリシア人に知れわたり、彼ら全員に恐れの念が生じ、キリスト・イエスの名があがめられた。18.信じた者たちの多くは、自分たちの行いを告白し、また知らせるために(パウロのもとに)やって来た。19.魔術を行う者たちの多くは、その魔術の本を持ってきてみんなの前で燃やした。それらの金額を計算すると、銀貨五万枚にもなった。20.こうして主の言葉は力強く成長し、また力を増して行った。
21.このようなことがあってから、パウロはマケドニアとアカイアを経てエルサレムへ行こうと心に決め、「わたしがそこへ行った後、ローマをも見なくてはならない」と言った。22.パウロは、自分に仕える者たちの中からテモテとエラストの二人をマケドニアへ派遣し、彼自身はしばらくの間アジアにとどまった。
23.そのころ、この道についてただならぬ騒動が起きた。24.デメトリオという名の銀細工師の男が、アルテミスの銀の神殿の模型を作り、それを職人たちに提供して少なからぬ利益を得させていた。25.彼はその人たちや、そのような仕事をしている人々を集めて言った。「諸君、我々はこの仕事のお陰で繁栄していることは、みなさんの承知しているところだ。26.諸君も見たり聞いたりしているとおり、このパウロは『手で造ったものは神ではない』と言って、エフェソのみならずアジアのほぼ全域で、大勢の人々を説き伏せ邪道に導いている。27.これは我々のもうけに悪評がたつ危険があるばかりでなく、この偉大な女神アルテミスの神殿も顧みられなくなり、ひいては全アジアと世界が拝んでいるこの女神の尊厳さえも損なわれることになりかねない」。

28.人々はこれを聞いて大いに怒り、「エフェソ人たちの偉大なるアルテミス」と言って叫んだ。29.そして町が混乱に満ちてしまい、人々はパウロの同行者であるマケドニア人のガイオとアリスタルコを捕らえて、一斉に劇場になだれ込んだ。30.パウロは群衆の中へ入って行こうとしたが、弟子たちがそれを止めた。31.パウロの友人であったアジア地域のある高官たちも、パウロに(人を)送って劇場へは行かないようにと頼んだ。32.さて、ある者たちはこのことを、ほかの者はあのことを叫び、集会は大混乱に陥っていたので、多くの者は何のために集まっているのかさえわからなかった。33.そこでユダヤ人たちは群衆の中からアレクサンドロに指図し、彼を前に押し出した。アレクサンドロは手を振りながら群衆に対して弁明しようとした。34.しかし、群衆は彼がユダヤ人だと知って、一斉に声を上げ、「エフェソ人たちの偉大なアルテミス」と言って二時間ほど叫び続けた。35.しかし、町の書記官が群衆をしずめて言った。「エフェソの諸君、このエフェソの町が、偉大なアルテミスと天から降りて来たそのご神体との守護者であることを知らない者がいるだろうか。36.このことは否定できないことだから、あなたがたは静かにしているべきで、軽率なことをしてはならない。37.あなたがたはこの人たちを連れて来たが、この人たちは神殿を冒涜したのでも我々の神を冒涜したのでもない。38.そこでもし、デメトリオと仲間の職人たちが誰かに言い分があるなら、裁判の日も開かれるし総督もいるのだから、そこで互いに訴えなさい。39.もしそれ以外の要求があるなら、正式な議会で解決してもらうがよい。40.今日のことについて、我々は反乱罪に問われる恐れがある。この騒動については、言い訳ができるような何の理由もないからだ」。こう言って彼はその集会を解散させた。


●「自然の中で聴く聖書」使徒たちの働き 19章



                                                古代都市エフェソスの野外劇場

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