2015年4月13日月曜日

新約聖書原典「使徒たちの働き」20章の翻訳(私訳)


使徒たちの働き 

20章


1.騒動がおさまった後、パウロは弟子たちを呼んで励まし、別れの挨拶をしてからマケドニアに向けて旅立った。2.そしてその地方を巡り歩き、彼らを多くの言葉をもって励まし、ギリシアへ行った。3.そこで三か月過ごしてから、シリアに向けて出帆しようとしていたとき、ユダヤ人たちによるパウロへの陰謀が起きたので、彼はマケドニアを通って帰ることに決めた。4.ピロの子でベレア人のソパトロ、テサロニケ出身のアリスタルコとセクンド、デルベ人ガイオ、テモテ、アジア人のティキコとトロフィモがパウロに同行していた。5.彼らは先に出発していてトロアスでわたしたちを待っていた。6.除酵祭の日の後、わたしたちはフィリピから船出し、五日かけて彼らの待つトロアスへ行き、そこに七日間滞在した。
7.週の初めの日に、わたしたちがパンを裂くために集まったとき、パウロは翌日に出発しようとしていたので彼らに話をしていたが、その話が夜中まで長引いていた。8.わたしたちが集まっていた二階の間には、たくさんの明かりが灯されていた。9.エウティコという名の若者が窓に腰掛けていたが、パウロの話が長くなったため深い眠気に襲われ、ついに寝入ってしまい、三階から下に落ちてしまった。若者は起こされたが(すでに)死んでいた。10.しかしパウロは(二階から)降りて来て若者の上に身を伏し抱いて言った。「心配ない。まだ息がある」。11.それから(二階に)上がってパンを裂いて食べ、また夜明けまで長い間話し合ってから出発した。12.人々は生き返った少年を連れて帰り、計り知れぬほど慰められた。
13.さて、わたしたちは先に船に乗り込んでアソスに向けて出帆した。そのところでパウロを船に乗せることにしていた。それはパウロが徒歩で行くことにしていて、彼がそのように指示していたからである。14.パウロがアソスでわたしたちと落ち合ったので、わたしたちは彼を船に乗せてミティレネへ行った。15.翌日、そこから出帆しキオスの沖に達し、それから次の日にサモスに寄港し、次の日にミレトスに着いた。16.パウロは、アジアで時間を費やさないようエフェソを通過することに決めていたからである。できればペンテコステの日にはエルサレムに着いていたかったので、(旅を)急いでいたのである。
17.さて、パウロはミレトスからエフェソに(人を)遣わして、教会の長老たちを(ミレトスに)呼び寄せた。18.彼らがパウロのもとに来たとき、パウロが彼らに言った。「わたしがアジアに足を踏み入れた最初の日から、わたしがどのようにいつもあなたがたと共に過ごしてきたか、あなたがたはよくご存知です。19.わたしはユダヤ人たちによる陰謀によって自分にふりかかる数々の涙と試練の中でも、謙遜の限りを尽くして主に仕えてきました。20.益となることは、ひるむことなく、公衆の面前でも家々でもあなたがたに知らせ、また教えてきました。21.わたしはユダヤ人にもギリシア人にも、神への悔い改めと、わたしたちの主イエスに対する信仰とを力強く証ししたのです。22.そして今、わたしは霊に強いられてエルサレムへ行きます。そこでわたし(の身)に何が起こるか、わたしにはわかりません。23.ただ、聖霊がこの町についてわたしにはっきり告げていることは、『投獄と苦難とがわたしを待ち受けている』ということです。24.しかし、わたしの(定められた)道のりを走り終え、わたしが主イエスから受けた務め、すなわち、神の恵みの福音を力強く証しする務めを果たし終えさえすれば、わたしにとってこの命は少しも惜しいとは思いません。25.そして今、御国を宣べ伝えるためにあなたがたの間を行き巡ったわたしの顔を、あなたがたみんなはもう二度と見ることはないと、わたしには分かっています。26.ですから今日という日に、あなたがたに宣言しておきますが、全ての人の血(の責任)からわたしは潔白なのです。27.わたしは神の御心を全てひるむことなく、あなたがたに知らせておいたからです。28.あなたがた自身と全ての群れに気を配りなさい。聖霊は(キリストが)ご自身の血によって買い取られた神の教会を牧させるために、あなたがたを群れの中の監督者に任命されたのです。29.わたしが去って行った後、狂暴な狼どもがあなたがたの中に入りこんで、群れを容赦なく荒らすことをわたしは知っています。30.また、あなたがたの中からも曲がったことを言って、弟子たちを自分たちの側に引き込もうとする者たちが現れるでしょう。31.だから目を覚まして、わたしが三年の間、夜も昼も涙をもって一人ひとりに絶え間なく諭し続けたことを思い出してほしい。32.そして今、わたしは神とその恵みの言葉にあなたがたを委ねます。御言葉には、あなたがたを建てあげ、聖別された全ての人々とともに、(御国を)相続する力があります。33.わたしは(他人の)銀も金も衣服も欲しがったことはありません。34.彼ら自身が知っているとおり、この両手はわたしの必要のため、またわたしと共にいる人々のためにも仕えてきたのです。35.こうしてわたしは、よく働いて弱い人々を助けなければならないこと、また、『受けるよりは与えるほうが幸いである』と言われた主イエスの言葉を思い起こすよう、すべてをあなたがたに示したのです」。

36.こう言ってから、パウロは彼ら一同と共にひざまずいて祈った。37.みんなは激しく泣き、パウロの首を抱いて接吻した。38.彼らは、「もう二度と自分の顔を見ることはない」と言った(パウロの)言葉に特に心を痛めた。それから彼らはパウロを船まで見送った。


●「自然の中で聴く聖書」使徒たちの働き 20章


                                               ミレトス遺跡

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