2013年9月3日火曜日

新約聖書原典「ルカによる福音書」13章の翻訳(私訳)

ルカによる福音書 

13章


1.ちょうどその頃、ある人々がイエスのところに来て、ピラトがガリラヤ人たちの血を彼らの犠牲の捧げものに混ぜたことを知らせた。2.そこでイエスは彼らに答えて言われた。「これらのガリラヤ人たちがそのような目に会ったのは、ほかの全てのガリラヤ人たちより罪深い者たちだったからだと思うか。3.決してそうではない。わたしはあなたがたに言うが、あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅ぼされるだろう。4.また、シロアムにおいて塔が倒れて死んだかの十八人は、エルサレムに住むその他の全ての人々より罪の負債を多く負う者たちだったからだと思うか。5.決してそうではない。わたしはあなたがたに言うが、あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅ばされるだろう」。
6.そして、イエスはこの譬えを話された。「ある人が、自分のぶどう園にいちじくの木を植えた。そして、そのいちじくの木に実を探しに行ったが見つからなかった。7.そこでぶどう園の園丁に言った。『わたしは三年もこのいちじくの木に、実を探しに来ているが見つからない。[だから]これを切り倒せ。何のために土地を無駄にしておくのか』。8.しかし、園丁は答えてその人に言った。『ご主人様、今年もそのままにしておいてください。それまでに木の周りを掘って肥料をやってみます。9.そうすれば、来年、実がなるかもしれません。もしそれでもだめでしたら、切り倒してください』」。
10.さて、イエスは安息日にある会堂で教えておられた。11.すると、見よ、十八年も病の霊に取りつかれている婦人がいた。腰が折れ曲がっていて、真っ直ぐに立つことが全くできないでいた。12.イエスは彼女を見て呼びかけて言われた。「婦人よ、あなたの病は解かれた」。13.そして、彼女に手を置かれると、彼女はたちどころに真っ直ぐになり、神をほめたたえた。14.しかし、会堂長は、イエスが安息日に癒しを行ったことに憤慨して応答し、「働くべき日は六日ある。だから、あなたがたはその間に来て治してもらいなさい。安息日はいけない」と群衆に言った。15.しかし、主は答えて会堂長に言われた。「偽善者たちよ、あなたがたのうち誰でも、安息日に自分の牛やロバを家畜小屋から解き、引いて行って水を飲ませてやらないだろうか。16.この婦人はアブラハムの娘にもかかわらず、見よ、十八年もサタンは彼女を縛っていた。安息日に彼女がこの束縛から解かれるのは当然ではないか」。17.イエスはこう話されて、イエスに反対する人々は皆、恥入ったが、群衆は皆イエスによってなされる数々の素晴らしい業を喜んでいた。
18.そこでイエスは言われた。「神の国は何に似ているか。何にたとえようか。19.それはからし種に似ている。人がそれを取って自分の菜園にまくと成長して木となり、空の鳥たちがその枝に巣を作る」。
20.また言われた。「神の国を何にたとえようか。21.それはパン種に似ている。女がそれを取って三サトン(約38リットル)の小麦粉に混ぜると、全体がふくれる」。
22.イエスは町ごとに、村ごとに教えながら巡り歩き、エルサレムへの旅を続けておられた。23.すると、ある人がイエスに言った。「主よ、救われる人たちは少ないのですか」。そこでイエスは彼らに言われた。24.「狭い門から入る様に努めなさい。言っておくが、多くの人々が入ろうと求めるが、入れないからだ。25.家の主人が起き上がって門を閉めてから、あなたがたが外に立って門をたたき『ご主人様、開けてください』と言っても、主人はあなたがたに答えて言うだろう。『あなたがたがどこからの者か、わたしはあなたがたを知らない』。26.その時あなたがたは言い始めるだろう。『わたしたちはあなたの前で食べたり飲んだりし、あなたはわたしたちの大通りで教えられました』。27.すると、主人はあなたがたに言う。『あなたがたがどこからの者か、わたしは[あなたがたを]知らない。不正を働く者たちよ、皆わたしから離れ去れ』。28.神の国にアブラハム、イサク、ヤコブ、また全ての預言者たちがいるのを見ても、あなたがたは外に投げ出され、そこで泣き叫んだり歯ぎしりしたりするだろう。29.そして、人々が東から西から、また北から南から来て、神の国において食事の席に着くだろう。30.見よ、後の者たちが先になり、先の者たちが後になるだろう」。
31.ちょうどその時、あるファリサイ派の人々が近寄って来てイエスに言った。「ここから出て行ってください。ヘロデがあなたを殺そうとしていますから」。32.イエスは彼らに言われた。「行ってその狐に言いなさい。『見よ、わたしは悪霊を追い出し、今日も明日も癒しを行い、三日目には成し終える』と。33.だから、わたしは、今日も明日も次の日も進んで行かねばならない。預言者がエルサレム以外で死ぬことは不可能だからである。
34.エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、彼女に遣わされた者たちを石で打ち殺す者よ。ちょうど、雌鶏が自分の雛を翼の下に集めるように、わたしは何度お前の子供たちを集めようとしたことか。それなのに、お前たちは応じようとしなかった。35.見よ、お前たちの家は見捨てられてしまう。[それで]わたしはお前たちに言っておく。
『主の御名によって来られる方に祝福があるように』

と、お前たちが言う[時が来る]までは、お前たちは決してわたしを見ることがない」。






★ 「ピラトがガリラヤ人たちの血を彼らの犠牲の捧げものに混ぜたことを報告した。」
    (1)
 犠牲の奉献中の人々(ガリラヤ人)をピラトが虐殺したため、犠牲の動物の血と同時に人々の血が流されたことを表現したもの。(新約聖書ギリシア語小辞典:織田 昭 編)

★  γύναι, ἀπολέλυσαι τῆς ἀσθενείας σου  (12)
「婦人よ、あなたの病は解かれた」(12)

上記は腰の折れ曲がった婦人を癒された時、イエスが婦人に言われた言葉です。この婦人は11節を見ると、十八年間も「病の霊に取りつかれていた」とある。イエスの時代、病は悪霊(サタン)が取りついたことから来ていると信じられていたし、イエスもそのように理解されておられたことは16節のイエスの言葉からもわかる。「サタンは彼女を十八年も縛っていた。安息日に彼女がこの束縛から解かれるのは必要なことではないか」(16)。故に、上記12節は、「婦人よ、あなたの病は治った(癒された)」と訳すより、原典どおり、「婦人よ、あなたの病は解かれた」と訳すのが文脈上からもより正確と言える。ついでに ἀπολέλυσαι は ἀπολύω 「解く」の完了、受動態であり、「あなたは解かれている」と訳すこともできる。






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