2013年9月16日月曜日

新約聖書原典「ルカによる福音書」15章の翻訳(私訳)

ルカによる福音書 

15章


1.さて、徴税人たちや罪人たちが皆、イエスの話を聞こうと近寄って来ていた。2.すると、ファリサイ派の人々や律法学者たちが「この人は罪人たちを招いて一緒に食事をしている」と言って互いにつぶやき合った。
3.そこで、イエスは彼らにこの譬えを話された。4.「あなたがたのうちの誰かが百匹の羊を飼っていて、その内の一匹がいなくなれば、九十九匹の羊たちを荒野に残して、いなくなった羊のために、それを見つけるまで探しに行かないだろうか。5.そして、見つけると喜んで自分の肩に乗せ、6.家に帰り、友人や近所の人たちを呼び集め、彼らに『わたしと一緒に喜んでください。いなくなったわたしの羊が見つかりましたから』と言うだろう。7.わたしはあなたがたに言うが、このように、悔い改めを必要としない九十九人の正しい者たちより、悔い改めた一人の罪人のゆえに、天において喜びがあるだろう。
8.ドラクマ銀貨十枚を持っているある婦人が、もし、ドラクマ銀貨一枚《デナリオンと等価で労働者一日分の賃金》をなくしたら、彼女は灯りをともして家を掃除し、それを見つけるまで注意深く探さないだろうか。9.そして、見つけると友人や近所の人たちを呼び集め『私と一緒に喜んでください。なくしたドラクマ銀貨が見つかりましたから』と言うだろう。10.あなたがたに言うが、このように、悔い改めた一人の罪人のゆえに、神の天使たちのいるところで喜びが沸き起こる」。
11.また言われた。「ある人に二人の息子がいた。12.弟が父に言った。『お父さん、わたしに財産の取り分をください』。そこで父は、二人に財産を分け与えた。13.何日もたたないうちに、弟は全てを取りまとめて遠い所へ旅に出た。そして、そこで放蕩三昧に生活し、自分の財産を食いつぶしてしまった。14.彼が全てを使い果たしたとき、その地方にひどいききんがおこって、彼は(食べることにも)窮し始めた。15.そこで、その地方のある住民のところへ行って雇われたが、その人は彼を自分の農場へやって、豚の世話をさせた。16.そして、豚が食べていたいなご豆で飢えを満たしたいと切に望んだが、誰も彼に(食べ物を)与えてくれなかった。17.そこで、彼は我に返って言った。『わたしの父のところには雇い人たちが大勢いて、食べ物も有り余るほどあるのに、わたしはここで飢えて死のうとしている。18.立って、わたしの父の所へ行って、こう言おう。お父さん、わたしは天に対しても、あなたの御前にも罪を犯しました。19.もう、わたしはあなたの息子と呼ばれる資格はありません。わたしをあなたの雇い人の一人のようにしてください』。20.そして、立って自分の父の所へ行った。まだ遠く離れていたが、父は彼を見て憐れに思って駆け寄り、その首を抱いて接吻した。21.しかし、息子は父に言った。『お父さん、わたしは天に対しても、あなたの御前にも罪を犯しました。もう、わたしはあなたの息子と呼ばれる資格はありません』。22.しかし、父は自分の僕たちに言った。『急いで最上の衣を持ってきて彼に着せなさい。また、指輪を彼の指にはめ、靴を足にはかせなさい。23.また、肥えた子牛を引いて来てほふりなさい。食べて楽しもう。24.このわたしの息子が死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから』。そして、彼らは祝宴を始めた。25.しかし、その人の息子の兄は畑にいたが、帰って来て家に近づくと、音楽と踊りの音が聞こえた。26.そこで、僕の一人を呼んで『これはいったい何事か』と尋ねた。27.そこで、僕が兄に『あなたのご兄弟が帰って来ておられるのです。無事に帰られたので、あなたのお父上が肥えた子牛をほふられたのです』と言った。28.しかし兄は怒って家に入ろうとしなかったが、彼の父は出て来て彼をなだめた。29.すると、兄は答えて父に言った。『ご覧下さい、わたしは何年もあなたに仕えてきましたし、決してあなたの命令をなおざりにしたことはありません。それなのに、わたしが友人たちと一緒に楽しむのに、あなたはわたしに子やぎ一匹くださったことはありません。30.しかし、あなたの財産を、遊女どもと一緒に食いつぶしたあなたのこの息子が帰って来ると、彼の為に肥えた子牛をほふられました』。31.すると、父は兄に言った。『子よ、あなたはいつもわたしと一緒にいるし、わたしのものは全てお前のものだ。32.あなたのこの兄弟は死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから、喜び楽しむのは当然である』」。






  ★πάτερ, ἥμαρτον εἰς τὸν οὐρανὸν καὶ ἐνώπιόν σου,(18)
 οὐκέτι εἰμὶ ἄξιος κληθῆναι υἱός σου· ποίησόν με ὡς ἕνα τῶν μισθίων σου(19)

  「お父さん、わたしは天に対しても、あなたの御前にも罪を犯しました」(18) 「もう私はあなたの息子と呼ばれる資格はありません。わたしをあなたの雇い人の一人のようにしてください」(19)   18と19節はこの放蕩息子が困窮の末に我に帰り、故郷を思い出して父のもとへ帰る決心をした時のものです。彼は父のもとに帰って、改心の表明として上記の告白をしようと心に決めていた。しかし…21節、彼が準備していたこの言葉は、全てを言いきる前に途中で、22節の父の「急いで~」からの言葉に遮られてしまった。準備していた『雇い人の一人のようにしてください』の言葉は、息子がこの言葉を言う間もなく、憐れみ深い父親の言葉によって覆われてしまっているのである。




0 件のコメント:

コメントを投稿