2013年8月23日金曜日

新約聖書原典「ルカによる福音書」12章の翻訳(私訳)

ルカによる福音書 

12章


1.数えきれないほどの大勢の群衆が集まって来て、互いに足を踏み合うほどになったので、イエスは初めに、ご自分の弟子たちに対して話し始められた。「パン種に気をつけなさい。それはファリサイ派の人々の偽善である。
2.覆い隠されているもので、明らかにされないものはなく、隠されているもので、知られないものはない。3.だから、あなたがたが暗闇で言ったことは、すべて明るみで聞かれ、密室でささやいたことは、屋根の上で言い広められるだろう。
4.しかし、わたしは友であるあなたがたに言う。体を殺すことができても、そのあとそれ以上何もできない人々を恐れてはならない。5.わたしはあなたがたに、誰を恐れるべきかを示そう。殺した後で、ゲヘナに投げ込む権威を持つ方を恐れなさい。そうだ、わたしは言う。その方を恐れなさい。6.五羽の雀は二アサリオン(デナリオンの1/16=500円位)で売られているではないか。しかし、それらの内、一羽も神の御前に忘れられてはいない。7.それどころか、あなたがたの髪の毛さえも全て数えられている。恐れてはならない。あなたがたは、多くの雀より優れている。
8.わたしはあなたがたに言う。だれでも、人々の前でわたしを(信じると)言い表す人は、人の子も、神の天使たちの前で、その人を言い表す。9.しかし、人々の前でわたしを知らないと言う者は、神の天使たちの前で知らないと言われる。
10.人の子に対して言い逆らう者は、誰でも赦される。しかし、聖霊を冒涜する者は赦されない。
11.人々があなたがたを会堂や、支配者たち、権力者たちのところへ連れて行く時には、どう弁明しようか、何を言おうかなどと心配してはならない。12.聖霊がその時、言うべきことをあなたがたに教えてくださるのだから」。
13.ところが、群衆の中のある者がイエスに言った。「先生、わたしの兄弟に、わたしの相続分を分けてくれるように言ってください」。14.イエスはその人に言われた。「人よ、誰がわたしを、あなたがたの裁判官また分配者に任命したのか」。15.そこで彼らに言われた。「あらゆる貪欲には注意を払って警戒しなさい。いかに多くの財産があっても、その人の命は持ち物にはよらないからである」。
16.そこで、イエスは彼らに譬えを語って言われた。「ある金持ちの畑が豊作であった。17.そこで、心の内で思いめぐらして言った。『どうしようか。わたしの穀物を貯蔵しておく場所がないのだが』。18.そして言った。『こうしよう。わたしの倉を取り壊し、もっと大きい倉を建てよう。そして、穀物や財産をすべてそこにしまい込もう。19.そして、わたしの魂に言おう。魂よ、お前には長年分の多くの財産が貯えられている。休養せよ、食え、飲め、楽しめ』。20.しかし、神が彼に言われた。『愚か者よ、今夜、お前の命はお前から取り去られる。そうしたら、お前が準備した物は、誰のものになるのか』。21.自分のために蓄えて、神に対して富まない者はこれと同じである」。
22.また[ご自分の]弟子たちに言われた。「だから、わたしはあなたがたに言う。何を食べようかと命のことで思い煩い、何を着ようかと体のことで思い煩ってはならない。23.命は食物にまさり、体は衣服にまさる。24.カラスたちをよく見なさい。まくことも刈り入れることもしない。彼らには納屋も倉もない。しかし、神は彼らを養っていてくださる。あなたがたは鳥たちよりどれほど優れていることか。25.あなたがたのうち誰が心配したところで、自分の寿命を僅かでも延ばすことができようか。26.だから、そんなごく小さなこともできないのに、どうしてほかの事まで心配するのか。27.野のゆりがどのように育っているか、よく観察しなさい。労することもなく紡ぐこともしない。しかし、あなたがたに言うが、栄華を極めたソロモンでさえ、この様には着飾っていなかった。28.今日は生えていて、明日は炉に投げ入れられる野の草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、わたしたちにはなおさらのことである。ああ、信仰の薄い者たちよ。29.あなたがたも、何を食べようか、何を飲もうかと追い求めるな。また、あくせくするな。30.これらのことはみな、世の異邦人たちが追い求めていることである。あなたがたの父は、これらのものがあなたがたに必要なのを、ご存知なのだ。31.ただ、神の国を求めなさい。そうすれば、これらのものは加えてあなたがたに与えられるだろう。32.小さな群よ、恐れるな。あなたがたの父は喜んで御国をあなたがたにくださるからである。
33.あなたがたの持ち物を売って、施し与えなさい。自分のために古びてしまわない財布を作り、尽きることのない宝を天に積みなさい。そこには盗人が近づかず、虫も害すことはない。34.あなたがたの宝がある所には、あなたがたの心もあるからである。
35.あなたがたの腰に帯を締め、ともし火を灯していなさい。36.あなたがたは、自分の主人が婚宴から帰って来る時、来て戸をたたいたならすぐに開けようと待っている人々のようなものである。37.主人が帰って来た時、目を覚ましているのを見られる、このような僕たちは幸いである。良く言っておくが、主人は帯を締め、彼らを食事の席に着かせ、彼らの傍らに来て給仕をしてくれるだろう。38.主人が夜中に戻って来ようと、夜明け前に戻って来ようと、このように見られる僕たちは幸いである。39.しかし、この事を知っていなさい。家の主人は、盗人がどの時間に来るか知っていれば、自分の家に押し入るのを許さない。40.あなたがたも、用意をしていなさい。思いもよらない時に、人の子が来るからである」。
41.ペトロが言った。「主よ、この譬えは、わたしたちに対して話しておられるのですか、それとも、みんなに対してですか」。42.主は言われた。「主人がその召使いたちの上に任命し、時に応じて(僕仲間に)食糧を割り当てる、忠実で思慮深い家令はいったい誰か。43.彼の主人が帰って来て、この様に行っているのを見られるこの僕は幸いである。44.まことにあなたがたに言うが、主人は全財産を管理させるために彼を任命するだろう。45.しかし、もし、この僕が自分の心の中で『わたしの主人は帰りが遅い』と言って、息子や娘たちをたたいて、食べたり飲んだり酔ったりし始めるなら、46.この僕の主人は、思いがけない日、気がつかない時にやって来て僕を厳罰に処し、不忠実な者たちと一緒に同じ目にあわせるだろう。
47.この僕は、主人の思いを知りながら用意もせず、主人の意志に従って行わなかったので、ひどく鞭打たれるだろう。48.しかし、知らずに鞭打たれるようなことを行った者は、打たれ方も少ないだろう。すべて多く与えられた者は多く求められ、多く任された者は、いっそう多くのものを要求されるだろう。
49.わたしは地の上に火を投じるために来た。火が既に燃えていたらと、どんなに願っていることか。50.しかし、わたしには受けるべきバプテスマがある。それが成し遂げられるまで、わたしはどんなに苦しめられることか。51.あなたがたは、わたしが地の上に平和をもたらす為に来たと思うか。そうではなく、あなたがたに言うが、むしろ分裂をもたらす為である。52.今から後、一つの家に五人がいれば、三人は二人と、二人は三人と分裂するだろう。53.父は子と、子は父と、母は娘と、娘は母と、姑はその嫁と、嫁は姑と分裂するだろう」。
54.そして、群衆に対しても言われた。「あなたがたは、西に雲が起こるのを見ると、すぐに『にわか雨が来る』と言う。するとそのようになる。55.また、南風が吹くと『熱くなる』と言う。すると、そのようになる。56.偽善者たちよ、地と空の様子を見分けることを知りながら、どうして、この時代を見分けることを知らないのか。

57.なぜ、あなたがたは、自分で正しいことを判断しないのか。58.あなたを訴える者と共に役人のところへ行く時は、途中でその人から解放されるよう努力しなさい。そうでないと、その人はあなたを裁判官のところへ引っ張って連れて行き、裁判官はあなたを獄吏に引き渡し、獄吏はあなたを牢に投げ込む。59.あなたに言っておく。最後のレプトン一枚を支払うまでは、決してあなたはそこから出られない」。






Ἔστωσαν ὑμῶν αἱ ὀσφύες περιεζωσμέναι καὶ οἱ λύχνοι καιόμενοι
「あなたがたの腰に帯を締め、ともし火を灯していなさい」(35)

上記をより正確に訳せば、「あなたがたの腰に帯を締め、ともし火を灯し続けなさい」 となる。これは、καιόμενοι (灯す)が現在形、分詞が使われ、Ἔστωσαν (いなさい)が現在形、命令法が使われていることによる。新約聖書ギリシア語において、現在形は現在における動作の進行、継続、反復を意味している。




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