2013年3月14日木曜日

新約聖書原典「マタイによる福音書」26章の翻訳(私訳)

マタイによる福音書 

26章


1.イエスはこれらすべての言葉を語り終えると、弟子たちに言われた。2.「二日後には過越祭となるのをあなたがたは知っている。しかし、人の子は十字架に架けられるために引き渡される」。
3.そのとき、祭司長たちや民の長老たちが、カヤファと呼ばれる大祭司の屋敷に集まり、4.イエスを策略により捕まえて殺そうと相談した。5.しかし、彼らは、「祭りの間はいけない。民衆の中に騒ぎが起こるといけないから」と言った。
6.さて、イエスがベタニアにある重い皮膚病を患うシモンの家におられると、7.ひとりの女が、非常に高価な香油の入った瓶を持ってイエスに近づき、食卓についておられるイエスの頭にそれを注いだ。8.しかし、それを見ていた弟子たちが憤慨して「なぜこんな無駄なことをするのか。9.これを高く売って、貧しい人たちに施すことができたのに」と言った。10.イエスはこれを知って彼らに言われた。「なぜこの女を困らせるのか。彼女はわたしに良い行いをしてくれたのだ。11.貧しい人々はいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつもあなたがたと一緒にいる訳ではない。12.彼女はこの香油をわたしの体に注いで、わたしを埋葬する準備をしてくれたのだ。13.よくあなたがたに言うが、この福音が宣べ伝えられる所では世界中どこでも、彼女が行ったことはその記念として語られるだろう」。
14.そのとき、十二弟子の一人でイスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところへ行って、15.「わたしが彼をあなたがたに引き渡せば、いくらくださいますか」と言った。そこで、彼らはユダに銀貨三十枚を支払った。16.この時からユダは、イエスを引き渡すための良い機会を狙っていた。
17.さて、除酵祭の第一日目に、弟子たちがイエスのもとに来て「わたしたちはどこに、あなたのために過越の食事を準備すればいいでしょうか」と言った。18.そこでイエスは言われた。「町へ行き、ある人のところへ行ってその人に言いなさい。『わたしの時が近づいている。あなたの所で、わたしの弟子たちと一緒に過越の食事をする、と先生が言っておられます』」。19.そこで弟子たちは、イエスが命じられたとおりに行い、過越の食事を準備した。
20.夕方となり、イエスは十二弟子たちと一緒に食事の席につかれた。21.そして、彼らと食事をしているときに言われた。「よくあなたがたに言っておくが、あなたがたの中の一人がわたしを引き渡そうとしている」。22.弟子たちは非常に心を痛めて、それぞれがイエスに、「主よ、わたしではないでしょう」と言い始めた。23.そこでイエスは答えて言われた。「わたしと一緒に手を鉢の中に浸している者が、わたしを引き渡すだろう。24.人の子は、彼について聖書に書かれているように去って行こうとしている。しかし、人の子を裏切るその人はわざわいだ。その人は生まれてこなかった方が、彼にとってよかったのだ」。25.イエスを裏切ろうとしているユダが答えて言った。「まさかわたしではないでしょう、先生」。イエスは彼に言われた。「そう言っているあなたがそれである」。
26.さて、彼らとの食事のとき、イエスはパンを取り祝福の祈りをささげて裂き、弟子たちに与えて言われた。「取って食べなさい。これはわたしの体である」。27.また、杯を取って感謝の祈りをささげ、彼らに与えて言われた。「みな杯から飲みなさい。28.これは罪の赦しが得られるよう、多くの人々のために流される契約のわたしの血である。29.しかし、わたしはあなたがたに言う。わたしの父の国で、あなたがたと一緒に新しい飲み物を飲むその日まで、わたしは今後ぶどうの実から作ったものを飲む事は決してない」。
30.一同は賛美の歌を歌ってから、オリーブ山へ出かけて行った。
31.その時イエスは彼らに言われた。「あなたがたは皆、今夜、わたしにつまずくだろう。こう書かれているからである。
『わたしは羊飼いを打つ。
群の羊たちは散らされるであろう。』
32.しかし、復活の後、わたしはあなたがたより先にガリラヤへ行く」。33.しかしペトロが答えてイエスに言った。「仮にみんなの者があなたにつまずいても、わたしは決してつまずきません」。34.イエスはペトロに言われた。「あなたによく言っておく。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」。35.ペトロがイエスに言った。「たとえあなたと一緒に死ななければならないとしても、決してあなたを知らないなどとは言いません」。ほかの弟子たちも皆、同じように言った。
36.それから、イエスは弟子たちと共にゲッセマネと呼ばれる場所に行かれ、弟子たちに「わたしが向こうに行って祈っている間、ここに座っていなさい」と言われた。37.そして、ペトロとゼベダイの二人の息子たちを伴って行かれ、悲しみ苦しみ始められた。38.そのとき彼らに言われた。「わたしの魂は悲しくて死ぬほどである。ここにいて、わたしと一緒に目を覚ましていなさい」。39.そして少し進んで行かれ、ご自分の顔を伏せて祈って言われた。「わたしの父よ、もし出来ることなら、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。ただ、わたしの願いどおりではなく、あなたの御心のように(なさってください)」。40.そして弟子たちのところに戻られ、彼らが眠っているのをご覧になり、ペトロに言われた。「あなたがたは、こんなにひと時も、わたしと一緒に目を覚ましている事ができなかったのか。41.誘惑に陥らないように、目を覚まして祈っていなさい。霊は熱心でも、肉は弱いのだ」。42.また二度目に行って祈って言われた。「わたしの父よ、わたしがこれを飲む以外にこの杯を過ぎ去らせることができないのなら、あなたの御心が行われますように」。43.そして再び戻り、眠っている弟子たちをご覧になった。彼らの目が重かったからである。44.そして彼らを離れ、再び行って三度目に同じ言葉でまた祈られた。45.イエスは弟子たちのところに戻られたとき、彼らに言われた。「まだ眠っているのか、休んでいるのか。見よ、時が近づいた。人の子が罪人たちの手に引き渡されるのだ。46.起きなさい、さあ行こう、見よ、わたしを引き渡す者が近づいて来た」。
47.まだイエスが話しておられると、見よ、十二人の一人のユダがやって来た。また彼と一緒に祭司長たちや民の長老たちから遣わされた大勢の群衆も、剣やこん棒を持ってやって来た。48.イエスを引き渡す者が彼らに合図を与えて言った。「わたしが接吻をする者がその人だ。その人を捕まえよ」。49.そしてすぐに彼はイエスに近づき「ようこそ、先生」と言ってイエスに接吻した。50.イエスが彼に「友よ、しようとしていることをしなさい」と言われると、人々は近寄りイエスに手をかけて捕らえた。51.すると見よ、イエスと一緒にいた者の一人が手を伸ばし、自分の剣を抜いて大祭司の僕を打って、その片耳を切り落とした。52.そのときイエスが彼に言われた。「あなたの剣を元の場所に収めなさい。剣をとる者たちはすべて剣によって滅びるのだから。53.それとも、わたしの父にお願いして、今すぐにでも、十二軍団以上の天使たちをわたしに送ってもらうことができないとでも思うのか。54.それでは、『このように起こらねばならない』という聖書の言葉がどうして成就されようか」。55.その時イエスは群衆に言われた。「あなたがたは強盗でも捕まえるように、剣とこん棒とを持ってわたしを捕まえようとして出て来たのか。わたしはいつも神殿の庭で座って教えていたが、あなたがたはわたしを捕らえなかった。56.しかし、こうなったのはすべて、預言者たちが書いた聖書の言葉が成就するためである」。そのとき、弟子たちは皆、イエスを見捨てて逃げ去った。
57.さて、イエスを捕らえた人々は、彼を大祭司カイアファのところへ連れて行った。そこに律法学者たちや長老たちが招集された。58.しかしペトロは遠くからイエスのあとについて大祭司の屋敷まで行き、事の結末を見ようと中に入って、下役たちと一緒に座っていた。
59.さて、祭司長たちとサンヘドリンの全会衆はどうにかしてイエスを殺そうと、彼についての偽りの証言を探していた。60.うその証言をする者たちが大勢進み出たが、見つからなかった。最後に二人の者が進み出て、61.言った。「この人は『わたしは神の神殿を壊して、三日で建て直すことができる』と言いました」。62.大祭司が立ち上がってイエスに言った。「この人たちがお前について不利な証言をしているのに、何も答えないのか」。63.しかしイエスは黙っておられた。また大祭司がイエスに言った。「生ける神に誓って我々に答えよ。お前は神の子キリストなのか」。64.イエスは彼に言われた。「あなたの言うとおりである。しかし、わたしはあなたがたに言っておく。あなたがたはやがて人の子が力ある方の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るだろう」。65.その時、大祭司は自分の上着を引き裂いて言った。「彼は神を汚した。もはや何の証言の必要があろうか。見よ、今、あなたがたはこの汚しごとを聞いた。66.あなたがたはどう思うか」。人々は答えて言った。「その男は死を免れない」。
67.それから人々はイエスの顔に唾をはき、そしてこぶしで殴り、ある者たちは平手でたたいて、68.言った。「キリストよ、言い当ててみよ、お前を打ったのは誰か」。
69.ペトロは外で中庭に座っていたが、一人の女の召使いが彼に近寄って来て「あなたはガリラヤのイエスと一緒でした」と言った。70.しかしペトロがみんなの前で打ち消して言った。「あなたが何を言っているのか、わたしにはわからない」。71.他の女の召使いも、ペトロが門の方へ出て行くのを見て、そこにいる人々に言った。「この人はナザレのイエスと一緒でした」。72.ペトロが再び「わたしはその人を知らない」と誓って打ち消した。73.しばらくして、そこに立っていた人々が近寄って来てペトロに言った。「確かにあなたも彼らの仲間だ。あなたの話しぶりでそれが分かる」。74.そのときペトロは、そんな人は知らないと激しく呪って誓いはじめた。するとすぐに鶏が鳴いた。

75.するとペトロは「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」とイエスの言われた言葉を思い出し、外に出て激しく泣いた。

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●「自然の中で聴く聖書」マタイによる福音書 26章


★「友よ、しようとしていることをしなさい」50
上の訳は意訳で、直訳は「友よ、あなたはその目的(捕まえる)のために来ているのだ」である。
 ἕως τῆς ἡμέρας ἐκείνης ὅταν αὐτὸ πίνω μεθʼ ὑμῶν καινὸν ἐν τῇ βασιλείᾳ τοῦ πατρός μου. 29 
 「わたしの父の国で、あなたがたと一緒に新しい飲み物を飲むその日まで…」  

αὐτὸ πίνω μεθʼ ὑμῶν καινὸν  「あなた方と一緒に新しい飲み物を飲む」。明らかに「新しい飲み物」が、その前句の「ぶどうの実から造ったもの」と対比されている。

★「あなたの話しぶりでそれが分かる」(73)
上記の訳は意訳。直訳は「あなたの話しぶりが、あなたを明らかにしている」である。




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