2012年10月1日月曜日

新約聖書原典「マタイによる福音書」15章の翻訳(私訳)

マタイによる福音書 

15章


1.そのような時に、ファリサイ派の人々と律法学者たちがエルサレムからイエスのもとに来て言った。2.「あなたの弟子たちはなぜ、先祖たちの言い伝えに違反するのですか」。それは弟子たちが、パンを食べる時に[自分たちの]手を洗わなかったからである。3.イエスは答えて彼らに言われた。「ではなぜ、あなたがたも自分たちの言い伝えのために、神の戒めに違反するのか。4.神は『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は必ず死ぬべきである』と言われたのだから。5.しかし、あなたがたは、父または母に対して、『あなたがわたしから受けて益となるはずのものを、(神への)献げ物にします』と言う者は、6.『自分の父を敬まってはならない』と言っている。こうしてあなたがたは、自分たちの言い伝えによって神の言葉を無にしたのだ。7.偽善者たちよ、イザヤはあなたがたについて、よくぞ預言したものだ。こう言っている。
8.『この民は唇ではわたしを敬うが、
彼らの心は遠くわたしから離れている。
9.彼らは無意味にわたしを拝み、
人間の決まりごとを、教えとして教えている。』」
10.そして、イエスは群衆を呼び寄せて、彼らに言われた。「聞いて、悟りなさい。11.口に入ったものが人を汚すのではなく、むしろ口から出て来るものこそが、人を汚すのである」。
12.その時、弟子たちが近寄って来てイエスに言った。「お言葉を聞いたファリサイ派の人たちがつまずいたのをご存知ですか」。13.イエスは答えて言われた。「わたしの天の父が植えられなかった草木は、すべて抜き去られるだろう。14.彼らをそのままにさせておきなさい。彼らは[盲人を]道案内する盲人なのだ。盲人が盲人を道案内すれば、両方とも穴に落ち込む」。
15.するとペトロが答えてイエスに言った。「わたしたちに[その]譬えを説明してください」。16.イエスは言われた。「あなたがたも、まだ悟らないのか。17.口に入るものはみな腹に入って出て行き、外に捨てられることがわからないのか。18.口から出るものは心から出て来るので、それが人を汚すのである。19.心から出て来るのは、論争、悪意、殺人、姦淫、淫行、盗み、偽証、冒瀆などである。20.これらが人を汚すのである。しかし、洗わない手で食事をしても、それが人を汚すのではない」。
21.さて、イエスはそこを出てティルスとシドンの地方へ行かれた。22.すると、見よ、その地方出身のカナン人の女が出て来て、「主よ、ダヴィデの子よ、私を憐れんでください。私の娘が悪霊にひどく苦しめられています」と言って叫んだ。23.しかし、イエスは彼女にお言葉を返されなかった。すると弟子たちがイエスに近寄って来て、「彼女を追い払ってください。わたしたちの後ろで叫び続けていますから」と言って懇願した。24.そこで、イエスは答えて言われた。「わたしは、イスラエルの家の失われた羊たちのほかには遣わされていない」。25.しかし、女はイエスのもとに来て、ひれ伏し、「主よ、私をお助けください」と言った。26.しかし、イエスは答えて言われた。「子供たちのパンを取り上げて、小犬たちに投げてやるのは良くない」。27.しかし、女は言った。「主よ、そうです。でも小犬たちも、その主人たちの食卓から落ちるパンくずはいただきます」。28.その時イエスは答えて彼女に言われた。「おお!女よ、あなたの信仰は立派だ。あなたの願いどおりになるように」。こうして、彼女の娘はその時から癒された。
29.さて、イエスはそこを去って、ガリラヤ湖畔へ行かれ、山に登られてそこに座っておられた。30.すると、大勢の群衆が、足の不自由な人たち、目の不自由な人たち、体の曲がった人たち、口の利けない人たち、そのほか大勢の人たちをイエスのところに連れて来て、その足元に横たえた。そこで、イエスは彼らを癒された。31.群衆は、口の利けない人たちが話し、体の曲がった人たちが治り、歩けない人たちが歩き、目の見えない人たちが見えるようになったのを見て驚き、イスラエルの神をほめたたえた。
32.イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた。「群衆がかわいそうだ。すでに三日もわたしと一緒にいるのに、何も食べものがないのだから。彼らを空腹のまま解散させたくない。途中で疲れきってしまうといけないから」。33.すると弟子たちがイエスに言った。「こんな人里離れた場所で、これほどの大勢の群衆に充分食べさせるだけのパンを、どこから(手に入れるのですか)」。34.イエスは弟子たちに、「パンはいくつあるか」と言われた。彼らは「七つと少しの小魚です」と言った。35.イエスは、群衆に地面に座るようにお命じになり、36.七つのパンと少しの魚を取り、感謝して裂き、弟子たちにお渡しになった。弟子たちは群衆に配った。37.みんなは食べて満腹になった。裂いたかけらの余りを寄せ集めると、七つのかごにいっぱいになった。38.食べた人は女と子供以外に、男の人が四千人であった。
39.群衆を解散させてから、イエスは舟に乗ってマガダンの地方へ行かれた。 

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●「自然の中で聴く聖書」マタイによる福音書 15章


 οὐ μὴ τιμήσει τὸν πατέρα αὐτοῦ
「決して自分の父を敬ってはならない」6

οὐ μὴ は強い禁止の言葉で「決して~してはならない」を意味する。イエスはユダヤ人たちが神の言葉(律法)を無視して、自分たちの律法を厳しく制定した点を指摘された。

ὅτι κράζει ὄπισθεν ἡμῶν.
「私たちの後ろで叫び続けていますから」23
ἡ δὲ ἐλθοῦσα προσεκύνει αὐτῷ λέγουσα· κύριε, βοήθει μοι.(25)

「女はイエスのもとに来て、”主よ、私をお助けください”と言って何度もひれ伏していた

23と25節をよく読むと、このカナンの女がいかに本気で、真剣にイエスに願ったかがわかる。23の動詞 κράζει は現在形が使われており、彼女が今何度もくりかえし叫び続けているということ。25の動詞 προσεκύνει は未完了過去形が使われていて、これは過去の動作(行為)が何度も繰り返されていたことを示している。






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