2015年5月19日火曜日

新約聖書原典「使徒たちの働き」23章の翻訳(私訳)


使徒たちの働き 

23章


1.パウロは議会に集まった人々を見つめて言った。「兄弟がた、わたしは今日まで神に対し、全く清い良心を持って生活してきました」。2.すると、大祭司アナニアはそばに立っている者たちに、パウロの口を打つように命じた。3.その時パウロは大祭司に向かって言った。「白く塗られた壁よ、神があなたを打とうとなさる。あなたは律法に従ってわたしを裁くために座っていながら、律法に反してわたしを打つことを命じるのですか」。4.そこで、そばに立っている者たちが言った。「お前は、神の大祭司を悪く言うのか」。5.パウロは言った。「兄弟がたよ、彼が大祭司だとは知らなかった。確かに、『あなたの民の指導者を悪く言ってはならない』と(聖書に)書かれています」。
6.しかし、パウロは、議会の中で一部はサドカイ派、一部はファリサイ派であることを知って叫んだ。「兄弟がた、わたしはファリサイ派の者でファリサイ派の子です。[わたしは]、死者たちが復活するという望みについて裁判を受けているのです」。7.パウロが言ったこのことで、ファリサイ派の人々とサドカイ派の人々の間で論争がおこり、会衆は分裂した。8.サドカイ派の人たちは、復活も天使も霊も存在しないと言い、ファリサイ派の人たちは、このいずれも存在すると主張していたからである。9.騒ぎが大きくなったので、ファリサイ派に属する数人の律法学者たちが立ち上がり激しく反論して、「この人の中には何も悪いところは見出せない。もしかすると、霊か天使がこの人に語ったのだろうか」と言った。10.論争が激しくなり、千人隊長は、パウロが彼らによって引き裂かれるのではないかと恐れ、下って行って兵士たちに、彼らの中からパウロを力ずくで連れ出し、兵営に連れて行くようにと命じた。
11.その夜、主は彼のそばに立って言われた。「勇気を出しなさい。あなたはエルサレムでわたしについて証ししたように、ローマでも証ししなければならない」。
12.夜が明けると、ユダヤ人たちは策略をめぐらし、パウロを殺すまでは飲み食いしないと誓い合った。13.この陰謀に加わった者が四十人以上いた。14.彼らは祭司長たちや長老たちのところへ行ってこう言った。「わたしたちはパウロを殺すまでは何も口にしないと、固く誓いました。15.それですから今、あなたがたは議会と一緒になって、パウロのことについて正確に調べるふりをして、彼をあなたがたのところに連れて来られるように千人隊長に申してください。わたしたちはパウロが来る前に、彼を殺す手はずを整えておきます」。
16.しかし、パウロの姉妹の息子がこの陰謀を耳にし、兵営に赴き、そこに入って行ってパウロに知らせた。17.パウロは百人隊長の一人を呼んで言った。「この若者を千人隊長のところへ連れて行ってください。何かお知らせすることがあるようですから」。18.そこで百人隊長はその若者を千人隊長のところへ連れて行ってこう言った。「囚人のパウロがわたしを呼んで、この若者があなたに何か話すことがあるので、彼をあなたのところへ連れて行くようにと頼みました」。19.千人隊長は若者の手を取って秘かに引き入れて尋ねた。「わたしに知らせたいこととは何か」。20.若者が言った。「ユダヤ人たちは、パウロについてもっと正確に尋問するふりをして、あすパウロを議会に連れてくるようにあなたにお願いしようと申し合わせています。21.ですから、彼らに説き伏せられてはなりません。彼らの中の四十人以上の者たちが、パウロを殺すまでは自分たちは飲み食いしないと誓って陰謀をめぐらしているのです。それで今、彼らは手はずを整えて、あなたからの承諾を待っているのです」。22.そこで千人隊長は、「これらをわたしに知らせたことは誰にも話すな」と命じ、その若者を去らせた。
23.そして、千人隊長は、[或る]二人の百人隊長を呼んで言った。「今夜九時にカイサリアへ出発できるように、歩兵二百人、騎兵七十人、槍兵二百人を用意せよ」。24.それから、パウロを乗せて、総督フェリクスのもとへ無事に送り届けるための馬の用意もさせて、25.このような内容を含む手紙を書いた。26.「クラウディウス・リシアスが、フェリクス総督閣下に謹んでご挨拶申し上げます。27.この者は、ユダヤ人たちによって捕らえられ、彼らによって殺されかけていましたが、彼がローマの市民権を持つ者であることがわかり、わたしが兵を率いて助け出しました。28.そして、彼らがこの者を告発している理由を知ろうと、わたしはユダヤ人の議会に(彼を)連れて行きました。29.(ところが)彼が訴えられているのは、ユダヤ人の律法が要求していることについてであって、死刑や投獄に相当する咎は何もないことが分かりました。30.しかし、彼に対する陰謀があるとの報告がわたしにありましたので、直ちに閣下のもとに(彼を)お送りし、この告発人たちには、彼に対する言い分は閣下の前で訴えるようにと命じておきました」。

31.さて、兵卒たちは彼らに命じられたとおりにパウロを引き取り、夜の間にアンティパトリスに連れて行った。32.翌日、彼らは騎兵隊にパウロの護送を任せて、兵営に戻って来た。33.騎兵たちはカイサリアに到着し、総督に手紙を渡してパウロを彼に引き渡した。34.総督は(手紙を)読んでから、パウロがどこの州の出身であるかを尋ねたところ、キリキア出身であると分かると、35.「お前の告発人たちが到着してから、お前の(言い分)を聞くことにする」と言った。そしてヘロデの官邸で彼を監視しておくようにと命じた。


●「自然の中で聴く聖書」使徒たちの働き 23章



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