2014年10月8日水曜日

新約聖書原典「使徒たちの働き」10章の翻訳(私訳)


使徒たちの働き 

10章


1.さて、カイサリアにコルネリウスという名の人がいた。イタリア隊と呼ばれる歩兵隊の百人隊長で、2.信仰深く、家族そろって神を畏れ、民衆に多くの施しを行い、絶えず神に祈っていた。3.ある日の午後三時ころ、幻で、神の使いが彼のところに入って来て、「コルネリウスよ」と言うのをはっきりと見た。4.彼は御使いをじっと見つめたが、恐ろしくなって、「主よ、何でしょうか」と言った。すると御使いが彼に言った。「あなたの祈りとあなたの施しは、神の御前に上って覚えられている。5.今、ヤッファへ人々を遣わし、ペトロと呼ばれるシモンという人を招きなさい。6.この人は、皮なめし職人シモンという人の客となっている。その人の家は海辺にある」。7.彼に語った天使はこう話してから離れ去った。そこでコルネリウスは二人の召使いと、彼にひたすら仕える信仰深い兵卒一人を呼んで、8.事の次第を詳しく話してから、彼らをヤッファへ遣わした。
9.次の日、一行が旅を進めて町に近づいたとき、ペトロは昼の十二時の祈りをするために屋上に上がった。10.ところが彼は空腹になり、(何か)食べたいと思った。人々が食事の準備をしているうちに彼は夢心地になり、11.天が開かれて、大きな布のような入れ物が四隅を吊るされて地上に下りて来るのを見た。12.その中には、四足のあらゆる動物、地を這うもの、空の鳥などが入っていた。13.そして彼に向って、「ペトロよ、立ってほふって食べなさい」という声がした。14.しかしペトロが言った。「主よ、とんでもないことです。わたしは不浄なもの、汚れたものは決して食べたことがありません」。15.すると二度目にまた声がした。「神が清められたものを、あなたが不浄なものとしてはならない」。16.このようなことが三度あってから、その入れ物はすぐに天に引き上げられた。
17.ペトロが(今)見た幻は何のことだろうと思い当惑していると、見よ、コルネリウスから遣わされた人たちがシモンの家を探し当てて入口に立ち、18.「ペトロと呼ばれるシモン様はここにお泊りですか」と呼びかけて尋ねた。19.ペトロは幻について思い巡らしていたが、霊が[彼に]言った。「見よ、三人の者たちがあなたを探している。20.さあ、立って下りて行き、何もためらわないで彼らと一緒に行きなさい。わたしが彼らを遣わしたのだから」。21.そこでペトロはその人たちのところに降りて行って言った。「ご覧ください、あなたがたが探しておられるのは、このわたしです。どうしてここへおいでになったのですか」。22.彼らは言った。「百人隊長のコルネリウス様は正しい人で神を畏れ、すべてのユダヤ国民からも評判のよい方ですが、この人が自分の家にあなたを招いて、あなたから御言葉を聞くようにと、聖なる天使からお告げを受けたのです」。23.そこでペトロは彼らを招き入れて泊らせた。
次の日、ペトロは立って彼らと一緒に出かけた。ヤッファから数人の兄弟たちも彼に同行した。24.さて翌日、ペトロはカイサリアに入った。コルネリウスは自分の親類や親しい友人たちを呼び集めて一行を待っていた。25.ペトロが(町へ)入って行くと、コルネリウスはペトロを迎え、その足元にひれ伏して拝した。26.ペトロは彼を起こして言った。「お立ちください。わたしも同じ人間です」。27.こう話してからペトロは(コルネリウスの家に)入り、大勢の人々が集まっているのを見て、28.彼らに言った。「あなたがたがご存じのように、ユダヤ人が他民族の人と協力したり交際したりすることは(律法で)禁じられています。しかし神は、人を不浄な者とか汚れた者などと言ってはならないことをわたしに示されました。29.ですから、お招きいただいた時、わたしはためらわずに来たのです。そこでお尋ねしますが、どんな御用でわたしをお招きくださったのですか」。30.コルネリウスは言った。「四日前のこの時間に、わたしが自分の家で午後三時の祈りをしていますと、輝く衣を着た一人の方がわたしの前に立って、31.こう言うのです。「コルネリウスよ、あなたの祈りは聞き入れられ、あなたの施しは神の御前に覚えられた。32.だからヤッファに(人を)やってペトロと呼ばれているシモンを招きなさい。この人は海辺の皮なめし職人シモンの家で客となっている」。33.そこでただちに、あなたのもとに(人を)送ったのです。よくおいでくださいました。ですから今、わたしたちは皆、主があなたに命じられた全てのことを聞くために、神の御前に集っているのです」。
34.ペトロは口を開いて言った。「神は差別をなさらないお方であることが、本当によく分かりました。35.どんな国の人であっても、神を畏れ、義を行なう人は、神がその人を受け入れてくださるのです。36.神はイエス・キリストをとおして平和を告げ知らせるために、イスラエルの子らにことばを遣わされました。この方こそ全ての者の主です。37.あなたがたは、ヨハネが叫んだバプテスマの後、ガリラヤから始まってユダヤの全土で起こったこの事をご存じです。38.ナザレのイエスのことです。神は聖霊とみ力によってこの方に油を注がれました。この方は、良い業をして行き巡られ、悪魔によって抑圧されているすべての人々を癒されました。神が彼と共におられたからです。39.わたしたちは、彼がユダヤの地方とエルサレムで行った全ての事の証人です。しかし、人々はこの方を木に吊るして殺したのです。40.神はこの方を三日目に復活させ、彼を見えるように現してくださいました。41.それは全ての人にではなく、神によってあらかじめ選ばれた証人、すなわち、イエスが死者たちの中から復活した後、彼と一緒に食べたり飲んだりしたわたしたちに対してです。42.そしてイエスはわたしたちに、ご自分こそ生きている者と死んだ者を裁く者として、神によって定められた者であることを人々に宣べ伝え、力強く証しするようにとお命じになりました。43.預言者たちも皆、この方について、彼を信じる者は誰でもその名によって罪の赦しが得られることを証ししているのです」。

44.ペトロがまだこれらの言葉を語っていると、この言葉を聞いている全ての人々に聖霊が下った。45.すると、割礼を受けている信者でペトロに随行して来た者たちは皆、聖霊の賜物が異邦人の上にも注がれたことに驚いた。46.彼らが自分たちの国語で語り、神を賛美しているのを聞いたからである。その時ペトロが答えた。47.「わたしたちと同じように彼らが聖霊を受けたからには、彼らが水でバプテスマを受けるのをいったい誰が阻止できようか」。48.そこでペトロは彼らに、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けるようにと指示した。こうして人々はペトロに、なお数日滞在するようにと願った。



●「自然の中で聴く聖書」使徒たちの働き 10章



κοινὸν καὶ ἀκάθαρτον (14)
「不浄なもの、汚れたもの」

「不浄なもの κοινὸν 」は偶像に捧げてけがれたもの、「汚れたもの ἀκάθαρτον 」はレビ記11章にあるユダヤ人には食べることを禁じた動物。

★「そしてイエスは~」(42)
42節の主語は「彼は」であり、これが「神」であるか「イエス」であるかは文脈で判断するしかない。文脈で判断すれば「神」(口語訳はそうしている)であるが、意味上は「イエス」とするのが正しい(新共同訳、新改訳)。訳者も後者を採用した。

αὐτῶν λαλούντων γλώσσαις (46)
「彼らが自分たちの国語で語り…」
「自分たちの」 が、その言葉を聞いているペトロに随行した「ユダヤ人たちの」と解釈するのが正しい。、外国人(異邦人)がユダヤの言語を話しているわけだから、ユダヤ人たちから見れば、自分たちの母国語、つまり「異言」(外国語)を語っていたということになる。このことが異邦人にも「聖霊の賜物」が注がれた証拠であるとしてユダヤ人を驚かせた(45)。五洵節の日にエルサレムで起きた出来事もこれと同じであった(2:1~参照)




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