2014年10月2日木曜日

新約聖書原典「使徒たちの働き」9章の翻訳(私訳)


使徒たちの働 

9章


1.さて、サウロはなおも、主の弟子たちに対する脅迫と殺害の息をはずませながら、大祭司のところに行き、2.ダマスコにある諸会堂宛ての手紙を要求した。それは、この道にいる者たちは、男も女も誰でも見つけ出し、縛り上げてエルサレムへ引っ張ってくるためであった。3.サウロが旅を続けてダマスコに近づいたとき、突然、天からの光が彼を巡り照らした。4.サウロは地に倒れ、彼に語りかける声を聞いた。「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか」。5.サウロは言った。「主よ、あなたはどなたですか」。すると、主が(言われた)。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。6.さあ、立って町へ入って行きなさい。そうすれば、あなたのなすべきことが告げられるであろう」。7.サウロに同行していた人たちは、声は聞こえていても何も見えないので、口もきけずに立っていた。8.サウロは地面から起き上がってその目を開けたが、何も見えなかった。人々は彼の手を引いてダマスコに連れて行った。9.彼は三日間、何も見えず、また食べることも飲むこともしなかった。
10.さて、ダマスコにアナニアという名の弟子がいた。主が幻の中で彼に言われた。「アナニアよ」。アナニアは言った。「主よ、ご覧ください、わたしはここにおります」。11.主は彼に言われた。「立って、『真っすぐ』という通りへ行き、ユダの家でサウロという名のタルソス人を探しなさい。見よ、彼は祈っているから。12.彼はアナニアという名の人が入って来て、自分に手を置いて見えるようにしてくれるのを[幻で]見たのである」。13.しかし、アナニアは答えた。「主よ、わたしはこの人がエルサレムで、あなたの聖徒たちに対してどんなにひどい事を行ったか、多くの人々から聞きました。14.またここでも彼は、あなたの御名を呼び求める者たちすべてを縛り上げるために、祭司長たちからの権限を携えています」。15.しかし、主は彼に対して言われた。「行きなさい、この人は、わたしの名を担うために、異邦人たち、王たち、またあなたがたイスラエルの子らの前に、わたしが選んだ器である。16.わたしは彼に示そう。わたしの名のためにどんなに苦しまねばならないかを」。17.そこで、アナニアは出かけて行って(ユダの)家に入り、サウロの上に両手を置いて言った。「兄弟サウロよ、主、あなたが来る途中であなたに現れてくださったイエスは、(あなたの目が)見えるように、また聖霊に満たされるようにとわたしを遣わされたのです」。18.すると、すぐに、うろこのようなものが目から落ち、見えるようになり、起き上がってバプテスマを受けた。19.それから食事をとり、元気をつけた。
サウロはなお数日間、ダマスコにいる弟子たちと過ごしたが、20.すぐに諸会堂で、「この方こそ神の子である」と、イエスを宣べ伝えた。21.これを聞いた人々は皆、非常に驚いて言った。「この人は、エルサレムでこの御名を呼び求める人々を根絶させた者ではないか。またここでも彼らを縛り上げて、祭司長たちのもとへ引っ張っていくために来ていたのではないのか」。22.しかし、サウロはますます力を与えられて、この方こそキリストであることを論証し、ダマスコに住むユダヤ人たちを仰天させた。
23.しばらくの日数が過ぎたころ、ユダヤ人たちはサウロを殺そうと相談した。24.しかし、彼らのたくらみはサウロに知られたが、人々は彼を殺そうと昼も夜も町の門を見張っていた。25.しかし、彼の弟子たちは夜の間に彼を連れ出し、籠に乗せて城壁伝いに吊り下ろした。
26.サウロはエルサレムに到着し、弟子たちに加わろうと試みたが、皆はサウロが弟子であることを信じようとしないで彼を恐れていた。27.しかし、バルナバはサウロを引き受け、使徒たちのところへ連れて行き、彼が(ダマスコへの)途上でどのようにして主に会い、主が彼に語られたか、またダマスコにおいて彼がイエスの名によってどのように大胆に語ったかを使徒たちに話して聞かせた。28.そうしてサウロは使徒たちと共にエルサレムを行き来し、主の名によって大胆に語っていた。29.彼は語ったり、ギリシア語を話すユダヤ人たちと議論したりしていたが、彼らはサウロを殺そうと企てていた。30.兄弟たちはそれを知って、サウロをカイサリアに連れて下り、タルソスへ送り出した。
31.こうして教会はユダヤとガリラヤ、サマリアの全てで平安を保ち、基礎が固まり、主を恐れながら歩み、聖霊の励ましによって発展していった。
32.さて、ペトロは方々を巡り歩きながら、ルダに住む聖徒たちのもとに下って来た。33.彼はそこで八年間も床に伏しているアイネアと言う名の人に会った。この人は中風であった。34.ペトロは彼に言った。「アイネア、イエス・キリストがあなたをお癒しになるのだ。起きなさい。そして自分で(寝床を)整えなさい」。すると彼はすぐに起き上がった。35.ルダとシャロンに住んでいる人々は皆、彼のことを見て主に立ち帰った。

36.さて、ヤッファにタビタ、これを訳せばドルカスという名の女弟子がいた。彼女はたくさんの良い行いや施しをしていた。37.ところが、そのころ彼女は病気となり死んだので、人々はその遺体を洗い二階の部屋に安置した。38.ルダはヤッファに近く、弟子たちはペトロがその町にいると聞いて二人の者をペトロのもとへ遣わして、「ためらわずにわたしたちのところへ来てください」と懇願した。39.そこでペトロは立って彼らと一緒に行った。ペトロが到着すると、人々は彼を二階の部屋に案内した。すると、やもめたちが皆ペトロのそばに泣きながら寄って来ては、ドルカスが彼女たちと一緒にいたころに作ってくれた下着や上着の数々を見せるのだった。40.ペトロはみんなを外へ出し、両膝をついて祈ってから(彼女の)遺体の方に向き直って言った。「タビタ、起きなさい」。すると彼女は目を開け、ペトロを見て身を起こした。41.ペトロは手を貸して彼女を立たせた。それから聖徒たちとやもめたちを呼んで、生きている彼女を示した。42.このことがヤッファ中に知れ渡り、大勢の人々が主を信じた。43.ペトロはなおしばらくの間、ヤッファで皮なめし職人のシモンという人のところに滞在した。


●「自然の中で聴く聖書」使徒たちの働き 9章



ἠγέρθη δὲ Σαῦλος ἀπὸ τῆς γῆς, ἀνεῳγμένων δὲ τῶν ὀφθαλμῶν αὐτοῦ
「サウロは地から起き上がって、その目を開けたが…」(8)

「起き上がって」「開けた」はいずれも受動態。これにはサウロが自身で起き上がり、自身で目を開けたのではないことが含蓄されている。自分では立つことも目を開けることもできなかった様子が伝わってくる。

ἀναστὰς πορεύθητι ἐπὶ τὴν ῥύμην τὴν καλουμένην Εὐθεῖαν καὶ ζήτησον

「立って『真っすぐ』という通りへ行きなさい。そして探しなさい」(11)

「行きなさい」「探しなさい」はいずれも時制はアオリスト(不定過去)の命令法が使われている。これは、「ただちに行きなさい」、「ただちに探しなさい」という即座の行動を命じる意味となる。



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