2013年8月12日月曜日

新約聖書原典「ルカによる福音書」11章の翻訳(私訳)

ルカによる福音書 

11章


1.イエスがある所にいて祈っておられた。イエスが祈り終えると、弟子たちのある者がイエスに言った。「主よ、ヨハネが自分の弟子たちに教えた様に、わたしたちに祈ることを教えてください」。2.そこで、イエスは彼らに言われた。「祈る時にはこう言いなさい。
『父よ、あなたの御名があがめられますように。
あなたの御国が来ますように。
3.わたしたちに必要な食物を、
日々お与えください。
4.わたしたちに負債のある人たちをすべて赦しますから、
わたしたちの罪をもお赦しください。
わたしたちを試みにあわせないでください』」。
5.また、彼らに言われた。「あなたがたの中の誰かに友がいて、真夜中に彼がその人の所にやって来てこう言ったとする。『友よ、パンを三つ貸してください。6.わたしの友人が、たった今、旅からわたしのところに着いたのですが、何も出すものがないのです』。7.すると、その人は内側から、こう返事をするとする。『迷惑をかけないでくれ。すでに戸は閉まっているし、子供達もわたしと一緒に床にいる。起きて差し上げる訳にはいかない』。8.あなたがたに言うが、友だからと言うのでは起きて彼に与えないが、しつこく頼むので、起き上がって必要なだけ与えるだろう。9.わたしもあなたがたに言う。求めなさい。そうすれば与えられるだろう。探しなさい。そうすれば見つかるだろう。門をたたきなさい。そうすれば開けてもらえるだろう。10.誰でも、求める者はそれを得、探す者は見出し、門をたたく者には、開けてもらえるからである。11.あなたがたの中の誰かに、子供が魚を求めるのに、魚の代わりに蛇を与える父親がいるだろうか。12.卵を求めるのに、サソリを与える父親がいるだろうか。13.だから、あなたがたは悪い者であっても、自分の子供たちには、良い贈り物を与えることを知っているとすれば、天の父はなおさら、ご自分を求める者たちに聖霊をくださるのである」。
14.イエスは悪霊[すなわち口の利けなくなる霊]を追い出しておられた。悪霊が出て行くと、口の利けない人が話し始めたので、人々は驚いた。15.そこで、彼らの中のある者たちは、「彼は悪霊どもの頭ベルゼブルによって、悪霊どもを追い出しているのだ」と言い、16.別の者たちは、天からのしるしを求めて、イエスを試そうとしていた。17.イエスは彼らの考えを見抜いて言われた。「どんな国でも、内部で分裂すれば荒廃する。また、どんな家でも、家の中でもめれば家庭崩壊する。18.そこで、サタンも自分で分裂すれば、どうしてその国は立ち行くだろうか。あなたがたは、わたしがベルゼブルによって悪霊どもを追い出していると言っているのだから。19.もし、わたしがベルゼブルによって悪霊どもを追い出しているのなら、あなたがたの子らは何によって追い出しているのか。だから、彼ら自身があなたがたの裁き手となるだろう。20.もし、[このわたしが]、神の指で悪霊どもを追い出しているのなら、それゆえに、神の国はあなたがたの上にすでに来たのである。21.充分に武装した強い人が、自分の屋敷を守っている時は、その財産は安全である。22.しかし、自分より強い人が押し入って、その人を打ち負かすなら、彼はその人が頼りにしていた武具を取り上げ、略奪品を分配する。23.わたしに味方しない者は、わたしに逆らう者であり、わたしと共に集めない者は、散らしているのである。
24.汚れた霊が人から出て行くと、休み場を求めて水のない所を行きめぐるが見つからない。[そこで]彼は言う。『出て来た自分の家に戻ろう』と。25.そして戻って見ると、掃除がしてあり、飾りつけがされていた。26.そこで出掛けて行き、自分より悪い別の七つの霊どもを連れて来て、そこに入り込んで住みつく。そうすれば、その人の後の状態は、初めよりさらに悪くなる」。
27.イエスがこれらの事を話しておられると、ある婦人が、群衆の中から声を上げてイエスに言った。「あなたを身ごもった胎と、あなたが吸った乳房とは、なんと幸いなことでしょう」。28.イエスは言われた。「むしろ、幸いなのは、神の言葉を聞いて守る人々である」。
29.群衆がさらに集まってきたので、イエスは話し始められた。「この時代は悪い時代で、しるしを求める。しかしヨナのしるし以外には、この時代にしるしは与えられない。30.ヨナが、ニネベの人々にしるしとなったように、人の子もこの時代にはしるしとなる。31.南の女王が裁きの時に、この時代の人々と共に立ち上がり、彼らを罪に定めるだろう。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからである。しかし、見よ、ソロモンにまさる者がここにいる。32.ニネベの人々が裁きの時に、この時代の人々と共に立ち上がり、この時代を罪に定めるだろう。なぜなら、彼らはヨナの宣教によって悔い改めたからである。しかし、見よ、ヨナにまさる者がここにいる。
33.誰も、ともし火をともして、隠れた場所[や枡の下]に置く人はいない。むしろ、(部屋に)入ってくる人たちに光が見えるように、燭台の上に置くのである。
34.体のあかりは、あなたの目である。あなたの目が健やかなら、あなたのからだ全体も明るい。しかし、悪ければ、あなたの体も暗い。35.だから、あなたの中にある光が暗くならないように気をつけなさい。36.だからもし、あなたのからだ全体が明るく、何も暗い部分がなければ、ともし火が明るくあなたを照らす時のように、全身が明るいだろう」。
37.イエスが話しておられると、ファリサイ派の人が、イエスと一緒に食事をしたいと願ったので、(家に)入って食事の席に着かれた。38.ところが、このファリサイ派の人は、イエスが食事の前に、最初に(手を)洗わないのを見て不思議に思った。39.そこで、主は彼に言われた。「実にあなたがたファリサイ派の人々は、杯や皿の外側は清めるが、あなたがたの内側は強欲と邪悪で満ちている。40.愚かな者たちよ、外側を造られた方は、内側をも造られたではないか。41.ただ内側にあるものを施し与えなさい。そうすれば見よ、全てがあなたがたには清いものとなる。
42.しかし、ああ、悲しいかな、あなたがたファリサイ派の人たちは。あなたがたは、はっか、うん香、またすべての野菜などの十分の一を納めておきながら、神の公平と愛をなおざりにしているからだ。それもしなければならないが、これもなおざりにはできない。
43.ああ、悲しいかな、あなたがたファリサイ派の人たちは。あなたがたは、会堂では上席を好み、広場では挨拶されることを好むからだ。
44.ああ、悲しいかな、あなたがたは見分けがつかない墓のようなものだ。人々がその上を歩いても気づかないからだ」。
45.すると、ある律法の専門家が答えてイエスに言った。「先生、あなたはそう言って、わたしどもを侮辱しておられるのです」。
46.イエスは言われた。「ああ、悲しいかな、あなたがた律法の専門家たちは。あなたがたは人々に負い切れない重荷を負わせて、自分では指一本もその重荷に触れようとしないからだ。
47.ああ、悲しいかな、あなたがたは預言者たちの墓を建てているからだ。しかし、あなたがたの先祖たちが彼らを殺したのだ。48.それゆえに、あなたがたは証人となって、あなたがたの先祖たちの行ったことに同意しきっているのだ。なぜなら、先祖たちが彼らを殺したのに、あなたがたが(彼らの墓を)建てているからだ。49だから、神の知恵もこう言っている。『わたしは彼らに預言者たちと使徒たちとを遣わす。しかし、人々は彼らのある者を殺し、ある者を迫害するだろう』。50.そのために,世界の初めから流されたすべての預言者たちの血の代償を、この時代は求められるだろう。51それはアベルの血から、祭壇と(神の)家の間で殺されたザカリアの血に至るまでである。そうだ、あなたがたに言っておくが、この時代は代償を求められるだろう。
52ああ、悲しいかな、あなたがた律法の専門家たちは。あなたがたは、知恵の鍵を取り上げて、自分たちが入らなかったばかりか、入ろうとする人たちをも阻止したからだ」。
53イエスがそこから出て行こうとすると、律法学者たちとファリサイ派の人々は激しく詰め寄り、さらに多くの質問をあびせかけた。54彼らは、イエスの口から出る言葉尻を捕らえようと、陰謀をめぐらしていたのである。






τὸν ἄρτον ἡμῶν τὸν ἐπιούσιον δίδου ἡμῖν τὸ καθʼ ἡμέραν (3)
「私たちに必要な食物を、日々お与えください」(3)

上記の一文をマタイのそれと比べてみると興味深い。マタイ(6:11)では「今日お与えください」となっているのに対し、ルカでは(καθʼ ἡμέραν・カタ ヘーメラン)「日々(毎日)お与えください」である。マタイの食物受給の緊急性(今日)に対し、ルカの方は、日々(毎日)の変わらぬ受給を願っているのである。

εἰ δὲ ἐγὼ ἐν Βεελζεβοὺλ ἐκβάλλω τὰ δαιμόνια, οἱ υἱοὶ ὑμῶν ἐν τίνι ἐκβάλλουσιν; (19)
「もしも、わたしがベルゼベルによって悪霊どもを追い出しているのなら、あなたがたの子らは、何によって追い出しているのか」(19)

あなたがたの子ら」(οἱ υἱοὶ ὑμῶν)は文脈からして、「同僚又は仲間たち」を意味する。






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