2012年4月24日火曜日

新約聖書原典「マルコによる福音書」16章の翻訳(私訳)

マルコによる福音書 

16章


1.さて、安息日が過ぎたので、マグダラのマリア、ヤコブの母マリア、そしてサロメとは、行ってイエス(の遺体)に塗るために香油を買った。2.週の初めの日の早朝、彼女たちは日の出とともに墓へ行った。3.そして互いに言った。「誰が墓の入り口から、私たちのために石を転がしてくれるでしょうか」。4.彼女たちが見上げてよく見ると、その石は非常に大きかったが、すでに転がされていた。
5.墓の中へ入って行くと、右側に長くて白い衣を着た若者が座っているのを見て、彼女たちはひどく驚いた。6.しかし若者が彼女たちに言った。「驚くな。あなたがたは十字架にかけられたナザレ人のイエスを捜しているが、そのお方は甦られてここにはおられない。見なさい、ここが遺体の納められた場所である。7.それより、あなたがたは行って、弟子たちとペトロに『イエスはあなたがたより先にガリラヤへ行かれる』と言いなさい。イエスがあなたがたに言われたとおり、あなたがたはそこでイエスにお会いできるであろう」。
8.彼女たちは墓から出て逃げ去った。彼女たちは恐怖に震え、夢うつつの状態だったので、誰にも何も話さなかった。恐ろしかったからである。
【しかし彼女たちは、命じられた全ての事を、ペトロと弟子達に手短に話した。その後、イエスご自身も東から西まで弟子たちを通して、聖なる朽ちることのない永遠の救いの使信を送り出されたのである。ア―メン。】
9.週の初めの日、朝早く、イエスは復活して先ずマグダラのマリアに(ご自身を)現わされた。この婦人からイエスは七つの悪霊を追い出されたのである。10.その彼女は、かつてイエスと一緒だった人々が泣き悲しんでいるところへ行って(そのことを)知らせた。11.しかし彼らは、彼女からイエスが生きておられること、またイエスを見たことを聞いたけれど、信じなかった。
12.その後、彼らの中の二人の者が田舎の方へ歩いて旅をしていると、イエスは違った姿で(ご自身を)現わされた。13.この人たちも行って、その他の人たちに知らせたが、彼らは二人の言うことを信じなかった。
14.[しかし]のちに、十一人の者たちが食事の席についているとイエスが現われ、彼らの不信仰とかたくなな心をお叱りになった。それは甦られたイエスを示された人々(の言うこと)を、彼らが信じなかったからである。15.そして彼らに言われた。「全世界へ行って、全ての造られた者に福音を告げ知らせなさい。16.信じてバプテスマを受ける者は救われる。しかし、信じない者は罪に定められる。17.しかし、信じる者たちには、これらのしるしが伴うだろう。わたしの名によって悪霊どもを追い出し、新しい言葉を語る。18.[また手で]蛇をつかむ。たとえ毒を飲んでも、決して彼らを害さない。病気の人々に手を置けば良くなる」。

19.さて、主イエスは彼らに語られた後、天に引き上げられ、神の右に座られた。20.一方、これらの人々は出かけて行って、あらゆる所で告げ知らせた。主は(彼らと)共に働かれ、しるしが伴うことで、御言葉を確かなものとされたのである。】




●「自然の中で聴く聖書」マルコによる福音書 16章

★ τοῖς μετʼ αὐτοῦ γενομένοις (10)
  「イエスと一緒にいた人々」 10節
 墓にいる「若者」によりイエスの復活を知らされ、またイエスご自身によって最初に知らされたマグダラのマリアが、主の復活を知らせに行った相手は「イエスと一緒にいた人々」であった。この表現は、この人々が先ず十一弟子であり、(ルカによるとその他の人々をも含んでいるールカ24:9)、イエスに一番近い人々であったことを示している。彼らはイエスに一番近いが故に、彼らの不信仰は一層イエスの譴責の対象となったのである(14)。

★ δυσὶν ἐξ αὐτῶν
 「彼らの内の二人」 12節
 明らかに10節の「イエスと一緒にいた人々」の内の二人という意味。 ἐξ αὐτῶν  はしばしば「弟子たちの内の」と訳される。

★ ἀπήγγειλαν τοῖς λοιποῖς·
 彼らは残りの(その他の)人たちに知らせた」 13節
 二人の弟子はエルサレムを出て、田舎(ルカによるとこの村はエマオというールカ24:13)に向かって歩いていた。その途上で(エマオで)イエスは二人にご自身を現わされた。故に τοῖς λοιποῖς(トイス  ロイポイス)  「残りの人たち」「その他の人たち」は、「エルサレムに残っている弟子(仲間)たち」の意味。

★ δαιμόνια ἐκβαλοῦσιν, γλώσσαις λαλήσουσιν καιναῖς

 「彼らは悪霊どもを追い出し、新しい言葉を語るだろう」 17節
 δαιμόνια (ダイモニア) は文字通り悪霊(複数)の意。 γλώσσαις  καιναῖς (新しい言葉) は「知らない言語」「まだ使ったことのない言葉」を意味する。これらのイエスの約束は、イエスの昇天後の原始キリスト教会において目に見える方法、すなわち異言を語るという形で現実の事となった。



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