2010年11月11日木曜日

新約聖書原典「ヨハネによる福音書」20章の翻訳(私訳)

ヨハネによる福音 

20章


1.さて、週の初めの日、早朝くまだ暗いうちに、マグダラのマリアは墓へ行き、墓から石が取り除かれているのを見た。2.そこで走って、シモン・ペトロともう一人のイエスの愛しておられた弟子の所へ行って、彼らに言った。「人々が主を墓から取り去りました。彼らが主をどこに置いたのか、わたしたちにはわかりません」。3.そこでペトロと、もう一人の弟子が出かけて墓へ行った。4.二人の弟子は同時に走り出したが、もう一人の弟子の方がペトロより速く前を走り、先に墓に着いた。5.そして彼は、身をかがめてのぞき込み、巻き布が置かれているのを見た。それでも、中には入らなかった。6.さて、シモン・ペトロもその弟子についてやって来て、彼は墓に入って行き、巻き布が置かれているのを確認した。7.また、イエスの頭の上に置かれていた手ぬぐいは、巻き布と一緒にではなく、離れた所に一か所にくるめて置いてあった。8.するとその時、最初に墓に着いたもう一人の弟子も入って来て、見て信じた。9.彼らは「イエスが必ず死者たちの中から甦えられる」という聖書の言葉を、まだ知らなかったからである。10.こうしてこの弟子たちは、再び自分たちの家に帰って行った。
11.しかし、マリアは墓の外で泣きながら立っていた。泣きながら身をかがめて墓の中をのぞくと、12.純白の衣を着た二人の天使が、一人はイエスの遺体が置かれていた場所の頭のところに、他の一人は足のところに腰をおろしているのを見た。13.するとその人たちが彼女に言った。「婦人よ、なぜ泣いているのか」。彼女はその人たちに「誰かが私の主を取り去ったのです。彼らが主をどこに置いたのかわからないのです」と言った。14.こう言って後ろを振り向くと、彼女はイエスが立っておられるのを見たが、それがイエスだとは気づかなかった。15.イエスは彼女に言われた。「婦人よ、なぜ泣いているのか。誰を捜しているのか」。その人が園丁だと思って、彼女がその人に言った。「旦那さま、もしあなたがあの方を取り去ったのなら、どこに置いたのか、私におっしゃってください。私がその方を引き取りますから」。16.イエスは彼女に言われた。「マリアよ」。彼女は振り向いて、その人にヘブライ語で「ラボニ」、すなわち「先生」と言った。17.イエスは彼女に言われた。「わたしに触れてはいけない。まだ父のみもとに上ってはいないのだから。それで、わたしの兄弟たちの所へ行って、彼らにこう言いなさい。『わたしは、わたしの父とあなたがたの父、わたしの神とあなたがたの神のもとへ上って行く』」。18.マグダラのマリアは行って、主にお会いしたことと、主が彼女に言われたことを弟子たちに報告した。
19.さてその日、すなわち週の初めの日の夕方、弟子たちはユダヤ人たちを恐れて、自分たちの居る場所の戸に鍵をかけていた。すると、イエスが入って来られ、真ん中に立ち、彼らに「平安あれ」と言われた。20.こう言って両手とわき腹を彼らに見せられた。それで弟子たちは主を見て喜んだ。21.すると、[イエスは]また彼らに言われた。「平安あれ。父がわたしを遣わされたように、わたしもあなたがたを遣わす」。22.こう言って息を吹きかけて、彼らに言われた。「聖霊を受けなさい。23.あなたがたが誰かの罪を赦すなら、それらの罪は赦され、あなたがたが誰かの罪を赦さないでそのままにしておくなら、それらの罪はそのまま残る」。
24.十二弟子の一人でディディモと呼ばれているトマスは、イエスが来られた時、彼らと一緒にいなかった。25.そこで、他の弟子たちが彼に「わたしたちは主を見た」と言った。しかし、トマスは彼らに言った。「わたしは主の両手に釘の跡を見、わたしの指をその釘の跡に入れ、わたしの手を、そのわき腹に差し入れてみなければ、決して信じない」。
26.八日の後、イエスの弟子たちが再び家の内にいて、トマスも彼らと一緒にいた。戸には鍵がかけられていたがイエスが入って来られ、真ん中に立って言われた。「平安あれ」。27.それからトマスに言われた。「あなたの指をここに持ってきて、わたしの両手を見なさい。また、あなたの手を持ってきて、わたしのわき腹に差し入れなさい。信じない者にならないで、信じる者になりなさい」。28.トマスは答えてイエスに言った。「わたしの主、わたしの神」。29.イエスは彼に「わたしを見たので信じたのか。見ないで信じる者たちは幸いである」と言われた。

30.さて、イエスは他にも多くのしるしを[ご自分の]弟子たちの前で行われたが、それらのことはこの書物の中には書かれていない。31.これらのことが書かれたのは、あなたがたが、イエスは神の子キリストであると信じるためであり、また、信じて、彼の名によって命を得るためである。


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●「自然の中で聴く聖書」ヨハネによる福音書 20章



25.βάλω τὸν δάκτυλόν μου εἰς τὸν τύπον τῶν ἥλων καὶ βάλω μου τὴν χεῖρα εἰς τὴν πλευρὰν αὐτοῦ
    「わたしの指をその釘の跡に入れ、わたしの手を、その脇腹に差し入れてみなければ…」
 
ヨハネは βάλω(バロー・投げる)という言葉を二度ここで使用している。直訳すると、「わたしの指を釘跡に投げ入れ、わたしの手を彼の脇腹に投げ入れ」である。トマスはそれほどに、弟子達のイエスの復活証言を激しくあり得ないこととして、拒否したのである。ここで「釘」(ἥλων・エーローン)は複数。八日後にトマスの前に現れた復活のイエスは、トマスの語ったこの言葉をそのまま彼に返される。
φέρε τὴν χεῖρά σου καὶ βάλε εἰς τὴν πλευράν μου(27)
「あなたの手を持ってきて、わたしの脇腹に差し入れなさい」。直訳すると「あなたの手を持ってきて、わたしの脇腹に投げ入れなさい」となる。



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