2015年6月9日火曜日

新約聖書原典「使徒たちの働き」26章の翻訳(私訳)


使徒たちの働き 

26章


1.そこで、アグリッパはパウロに、「お前自身について話すことを許す」と言うと、パウロは手を差し延べて弁明をし始めた。
2.「わたしがユダヤ人たちによって告訴されているあらゆることについて、アグリッパ王よ、今日、あなたの前で弁明できることを幸いに思います。3.あなたは、ユダヤ人たちの習慣も論点も、全てをよくご存知です。ですから、どうかわたしの話すことに忍耐をもってお聞きください。
4.さて、同胞の間でもエルサレムでも、わたしが最初から行った若いころの生活ぶりは、ユダヤ人ならみな知っています。5.彼らは以前からわたしを知っているのです。もし、彼らが証言しようと思えば(できることですが)、わたしは、わたしたちの宗教の中でも最も厳格な派に従って、ファリサイ派の一員として生活していました。6.そして今、わたしは、神がわたしたちの先祖たちに約束された希望を抱いているために、裁判を受けているのです。7.その約束を手に入れるため、わたしたちの十二部族は、夜も昼も熱心に望み(神に)仕えてきました。王よ、わたしはこの希望のために、ユダヤ人たちから訴えられているのです。8.神が死者たちを復活させるのに、なぜ、あなたがたは信じ難いことと判断なさるのですか。
9.実は、わたし自身も、ナザレのイエスの名については、大いに反対すべきだと考えておりました。10.そして、そのことをエルサレムにおいて実行し、このわたしが祭司長たちからの権限を受けて、大勢の聖徒たちを獄に閉じ込め、彼らが死の宣告を受けたときには、(賛成の)票を投じたのです。11.そして、すべての会堂ごとに、たびたび彼らを罰し、(神を)汚す言葉を強要し、彼らに対してますます怒り狂い、エルサレム以外の町々に対しても迫害を続けていました。
12.そのような中、わたしは祭司長たちの権限と委任状を携え、ダマスコへ向かって旅を続けていますと、13.王よ、わたしはその途中、真昼に天から、太陽の輝き以上の光が、わたしとわたしに同行していた者たちを巡り照らすのを見ました。14.わたしたちは皆、地に倒れました。そして、わたしにヘブライ語でこう呼びかける声を聞いたのです。『サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか。突き棒を蹴ると、けがをする』。15.そこでわたしは言いました。『主よ、あなたはどなたですか』。すると主が言われました。『わたしは、あなたが迫害しているイエスである。16.起き上がって、あなたの足で立ちなさい。わたしがあなたに現れたのは、あなたを(わたしの)奉仕者として定め、あなたが[わたしを]見たこと、わたしがあなたに示そうとすることの証人とするためである。17.わたしはあなたを、この民と異邦人たちの中から選び出し、わたしがあなたを彼らに遣わす。18.それは、彼らの目を開いて暗闇から光へ、サタンの支配から神に立ち返らせ、彼らが、わたしへの信仰によって罪の赦しを受けて、聖なる者とされた人々の中にあって、(御国を)受け継ぐようになるためである』。
19.それですからアグリッパ王よ、わたしは天からの啓示に逆らわず、20.最初にダマスコにいる人々、それからエルサレムにいる人々、それからユダヤの全地域と異邦人たちに至るまで、わたしは悔い改めて神に立ち帰り、悔い改めにふさわしい行いをするようにと伝えてきました。21.そのためにユダヤ人たちは、神殿の庭にいたわたしを捕まえて殺そうと企てました。22.けれども、わたしは神からの助けを受けて、今日まで、小さな者にも大きな者にも証しを立ててきました。わたしは預言者たちやモーセが、やがて起ころうとしていると語った事柄以外には、何も話してはいないのです。23.キリストは、苦しみを受けられ、死者たちの中から最初に復活されたからには、その光を、この民にも異邦人たちにも知らせようとされたのです」。
24.ところが、パウロがこう弁明していると、フェストゥスが大声で言った。「パウロ、お前は気が狂っている。博学がお前を狂わせているのだ」。25.しかしパウロが言った。「フェストゥス閣下、わたしは気が狂ってはいません。ただ、真実と良識をもって言葉を話しているのです。26.王はこれらのことについては理解しておられますので、これについては、わたしは率直に申し上げます。このことは片隅で起こった事ではありませんので、王はこれらの[何にも]気づかれてないことはないとわたしは確信しております。27.アグリッパ王よ、あなたは預言者たちを信じておられますか。信じておられることは、わかっています」。28.しかし、アグリッパ王はパウロに向かって(言った)。「お前は、僅かな言葉で、わたしをクリスチャンにしようとしている」。29.そこでパウロが(言った)。(言葉が)短かろうと長かろうと、わたしが神に願うのは、あなただけでなく、今日、わたしの言葉を聞いておられる全ての方々が、わたしのようになってくださることです。これらの鎖は別ですが」。

30.そこで、王と総督、ベルニケ、そして彼らと一緒に(裁判の席に)ついていた人々も立ち上がり、31.互いに、「この人は、死刑や投獄に値することは何一つしていない」と言いながら引き上げて行った。32.そしてアグリッパはフェストゥスに、「あの人は、皇帝に上訴していなかったなら、釈放されていただろう」と言った。


●「自然の中で聴く聖書」使徒たちの働き 26章


★「約束された希望を抱いているために」(6)
  「この希望のために」(7)
 「キリストは確かに苦しみを受けられ、死者たちの中から最初に復活されたのですから、」(23)

パウロの弁明の中心はあくまでも「復活の希望」についてであった。この信仰は、ファリサイ派の支持を得て、パウロにとってこの裁判は有利なものとなったが(31、32)、すでにパウロはこのとき、皇帝への上訴を希望していたので、カイサリアでの裁判は結審されず、パウロの身柄はローマへと送られることになった。

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