2014年12月5日金曜日

新約聖書原典「使徒たちの働き」13章の翻訳(私訳)


使徒たちの働き 

13章


1.さて、アンティオキアには、そこにある教会に、バルナバ、ニゲルと呼ばれるシメオン、キレネ人のルキオ、領主ヘロデの乳兄弟のマナエン、サウロなどの預言者や教師たちがいた。2.彼らが主に礼拝をささげ断食していると、聖霊が言った。「さあ、バルナバとサウロをわたしのために聖別し、彼らを召し出しておいた働きにあたらせなさい」。3.そこで、彼らは断食して祈り、二人の上に手を置いてから送り出した。
4.さて、聖霊によって送り出された二人はセレウキアに下り、そこからキプロスに向けて船出した。5.サラミスに着くと、二人はユダヤ人の諸会堂で神の言葉を宣べ伝え始めた。彼らは助手のヨハネを連れていた。6.彼らは島全体をパフォスまで巡り歩いたが、偽預言者で、バルイエスと言う名のユダヤ人の魔術師の男に出会った。7.彼は地方総督セルギウス・パウルスのもとにいた。この総督は賢い人で、バルナバとサウロを招いて神の言葉を聞きたいものだと思った。8.しかし、魔術師エリマー彼の名を訳すとこのようになるーは彼らの邪魔をして、総督を信仰からそらそうとした。9.そこで、サウロ、又はパウロは、聖霊に満たされて男をにらんで、10.言った。「ああ、あらゆる偽りとあらゆる邪悪とに満ちた者、悪魔の子、あらゆる正義の敵。真っすぐな主の道を曲げることをやめないのか。11.だから見よ、今、主の手がお前に臨み、お前は盲人となり、しばらくの間は太陽を見ることができなくなる」。すると、たちまち彼の上に霧と闇が臨み、さまよいながら誰か手を引いてくれる人を探した。12.この出来事を見た総督は、主の教えにすっかり驚いて信じた。
13.パウロとその一行はパフォスから船出しパンフィリアのペルゲへ行ったが、ヨハネは一行から離れてエルサレムに帰ってしまった。14.一行はペルゲから巡り歩いて、ピシディアのアンティオキアに到着した。そして、安息日に会堂に入って席についた。15.律法と預言者たちの書が朗読された後、会堂長たちが二人のもとに(人を)やってこう言わせた。「兄弟諸君、民衆に対して何か奨励の言葉がありましたら、どうぞお話しください」。16.そこで、パウロが立ち上がり手を振って言った。
「イスラエルの諸君、また、神を畏れる方々よ、聞いてください。17.この民イスラエルの神は、わたしたちの先祖たちを選び、エジプトにおける寄留時に民を増やし、高く掲げた御腕をもって彼らをそこから導き出し、18.四十年の間、荒野で彼らを養われました。19.カナンの地では、七つの民族を滅ぼし、彼らの地を分配してくださいました。20.これは四百五十年にも及びました。その後、神は預言者サムエルの時まで、裁き人たちをお立てになりました。21.それから、人々は王を求めたので、神はベニヤミン族出身の人で、キシュの子サウルを四十年の間彼らにお与えになりました。22.神はサウルに替えて、ダヴィデを立てて王とされました。彼についてはこのように証しして言われました。『わたしはエッサイの子ダヴィデを見出した。彼はわたしの心にかなう者、彼はわたしの思いをすべて行なうであろう』。23.神はこの子孫から、約束に従ってイスラエルに救い主イエスをもたらしてくださいました。24.ヨハネはイエスの来られるに先んじて、イスラエルの全ての人々に、悔い改めのバプテスマをあらかじめ宣べ伝えました。25.ヨハネがその生涯を閉じようとしていた時、彼はこう言いました。『あなたがたはわたしを誰だと思うか。わたしは(あなたがたが期待しているような)者ではない。しかし見よ、わたしの後にその方は来られる。わたしはその方の足の履物をお脱がせする値打もない』と。26.兄弟諸君、アブラハムの子孫の方々、ならびにあなたがたの中の神を畏れる方々、この救いのことばはわたしたちに遣わされたのです。27.エルサレムに住む人々とその指導者たちは、この方を認めず、安息日ごとに読まれる預言者たちの声をも理解せず、(この方を)裁判にかけて(その預言を)成就させたのです。28.そして、死に当たる理由は何も見いだせなかったのに、彼らはピラトにこの方を殺すようにと要求したのです。29.この方について書かれていることを全て成し遂げると、人々は(遺体を)木から取り下ろし墓に納めました。30.しかし、神はこの方を死者たちの中から復活させられたのです。31.この方は、ご自分と一緒にガリラヤからエルサレムに上った人たちに、幾日にもわたって(ご自分を)現わされ、その人たちは[今]、民に対してその方の証人となっているのです。32.わたしたちは、神が先祖たちに対してなされた約束を、あなたがたにも告げ知らせているのです。33.すなわち、神はイエスを復活させて、わたしたち子孫のためにその約束を果たされました。それは詩篇の第二篇に、
『あなたはわたしの子、わたしは今日あなたを生んだ』
と書かれているとおりです。
34.また、神がイエスを死者たちの中から復活させて、もはや朽ち果てたままにはなさらないことについては、このように言われました。『わたしはダヴィデに約束した聖なる確かな祝福を、あなたがたに与えよう』と。35.なぜなら、別のところでもこう言われています。『あなたは、あなたの聖者を、朽ち果てたままにはなさらない』と。36.ダヴィデは自分の時代に神の計画に仕えましたが、眠りについてその先祖たちに加えられ、ついに朽ち果てました。37.しかし、神が復活させられた方は朽ち果てることがなかったのです。38.だから兄弟諸君、このことを知っていただきたい。あなたがたに罪の赦しが告げ知らされているのは、この方によるのだということを。モーセの律法では義とされることができなかったあらゆることから、39.信じる者はみなこの方によって義とされるのです。40.だから預言者たちによって言われていることが、あなたがたの身に起こらないように注意していなさい。
41.『あざける者たちよ、さあ、驚き隠れよ。
わたしはお前たちの時代にこの業を行う。
だれかが詳しくお前たちに語っても、
お前たちには決して信じられない業である。』
42.パウロとバルナバが(会堂から)出て行こうとすると、人々は次の安息日にもこれらの言葉を語ってくれるようにと頼んだ。43.集会が終わっても、大勢のユダヤ人たちと神を敬う異邦人求道者たちがパウロとバルナバについて来たので、二人は彼らと話し合い、神の恵みにとどまっているようにと彼らを説得した。
44.次の安息日になると町中の人々が、主の言葉を聞こうと集まって来た。45.しかし、ユダヤ人たちは群衆を見てねたましく思い、パウロの語ることに口汚くののしって反対した。46.そこでパウロとバルナバは大胆に語って言った。「神の言葉は、先ずあなたがたに語られなければならなかった。しかし、あなたがたはこの方を拒んで、自分自身を永遠の命にふさわしくない者と決めている。だから、見よ、わたしたちは異邦人たちの方へ向かう。47.主はわたしたちに、こうお命じになられたからだ。
『わたしはあなたを異邦人たちの光として立てた。
あなたが地の果てに至るまで救いをもたらすためである。』」。

48.異邦人たちはこれを聞いて喜び、主の言葉をほめたたえた。そして永遠の命に(あずかるように)定められていた人々はみな信じた。49.こうして主の言葉は、その地方全体に広まっていった。50.しかし、ユダヤ人たちは、神を敬う貴婦人たちや町の有力者たちをそそのかしてパウロとバルナバを迫害させ、二人を彼らの地方から追い出した。51.二人は彼らに対し足のほこりを払い落し、イコニオンへ行った。52.弟子たちはそれでも、喜びと聖霊とに満たされていた。



●「自然の中で聴く聖書」使徒たちの働き 13章


★2節のさあ、バルナバとサウロをわたしのために聖別し、彼らを召し出しておいた働きにあたらせなさい」の、”さあ”は、”直ちに”と訳すこともできる。

★「モーセの律法では義とされ得なかったあらゆることから、39.この方を信じる者はみな義とされるのです」(38.39)

パウロの神学の中心となる思想。パウロがローマ書、ガラテヤ書を書くはるか以前に、彼の第一回目の伝道旅行中にすでにこの思想が彼の宣教の中心にあった。

ἐπειδὴ ἀπωθεῖσθε αὐτὸν καὶ οὐκ ἀξίους κρίνετε ἑαυτοὺς τῆς αἰωνίου ζωῆς, ἰδοὺ στρεφόμεθα εἰς τὰ ἔθνη (46)
しかしあなた方はこの方を拒んだので、自分自身を永遠の命にふさわしくない者と決めている。見よ、私たちは異邦人たちの方へ向かう」。

「向かう」と訳している στρεφόμεθα  は文字通り「向きを変える」「方向転換する」を意味する 。ユダヤ人たちがパウロの宣教を受け入れず、そこで証しされているイエスを拒んで、『自分自身を永遠の命にふさわしくない者と決めた』がゆえに、パウロは召命に従って(イザヤ49:6)ユダヤ人から異邦人への宣教へと方向を転換することとなった。

★ ἐπίστευσαν ὅσοι ἦσαν τεταγμένοι εἰς ζωὴν αἰώνιον (48)

永遠の命に定められていた人々はみな信じた

これを書いたルカもパウロと同じく(エフェ1:4,5)神の選びの予知を知っていたのであろう。




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